Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

小泉元総理の賞味期限

 私は以前より、小泉元総理の良かった点は経済政策でも郵政民営化でもなく、単に永田町の年功序列の人事状況に別の流れを加えたことだと考えている。外交で毅然とした態度を貫いたことは評価するが、それ以外の政策は人気取りにはなったが決して良いものではなかった。
 彼が優れたいたことは、自らの言動が世の中に最も効果を発揮するタイミングを見極め、その上で味方と敵を明確に分けるというわかりやすさを演じることに対する判断力が抜きんでていた。逆に言えば無駄口を叩かないという我慢強さを持っていた。加えて、自分の周りに置く人材に対する目利きも一定以上であったと思う。同じようなタイプの政治家として橋下大阪市長がいるが、言動の操作や人材登用の手法のいずれにしても小泉元総理の方が能力はかなり高い。

 今回も、原発の即時停止を絶妙のタイミングでぶち上げた(http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131112/stt13111215590004-n1.htm)。一時期盛んだった反原発脱原発も徐々に活動が下火になりつつあり、原発再稼働がやむなしの雰囲気が徐々に作られてきた矢先の行動である。私の立場は、原発の代替技術開発投資を促進することには強く賛成するが、その技術が未熟なうちは現在ある原発を最大限有効利用して、徐々にフェードアウトさせていくのが良いと考えている。そう考える理由は、まず被災時の危険性につては原発は稼働させていようがいまいが大きく変化しないという点にある。福島の場合でも停止中であった原子炉も危険が生じた。電源停止により発熱する現象は、稼働中であっても停止中であっても変わりはしない。この問題は、原発稼働により発生する放射性物質をどのように処理するのかという根本的な問題が解決しなければ変わりようがない。そして、それは今から放射性物質が徐々に増えるのではなく、すでに大量のそれがあるという点にある。また、原発を停止するということは既に保持しているこうした放射性物質への対応が疎かになりかねないという危険性も秘めている。
 私は以前、放射性物質日本海溝の奥深くに沈めればよいと書いた(http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20120530/1338303684)。これが良いかどうかはさておき、放射性物質処理の根本的な手法は諦められているのか一切議論がなされず、ただ先送り的に地中深くに埋めようという検討が行われているに過ぎない。最も重要なことは、原発を停止するか稼働させるかではなく放射性廃棄物や既存原子炉の処理技術を確立するということである。原発を徐々になくすのか即時停止させるのかはその先の議論なのだ。

 ただ、小泉元総理の行動は正直よくわからない面がある。義憤に駆られて行動するほど彼は甘ちゃんではないだろう。また、即原発停止を主張するには対処方法の提示があまりにも杜撰すぎる。専門家に任せておけばよいとしているが、専門家たちこそが再稼働容認だという考えはないのだろうか。
 政局的な話で言えば、これもまた原発が現在の自民党政権にとって致命傷になるという話でもない。現在の野党はからっきし状態なので、党としては敢えてこんな議論を持ち出すメリットがない。そもそも党員ではあるものの政治家を事実上引退している小泉元総理が党の立場を斟酌する義理もない。だから、正直言えば私は今のところ彼の真意を図りかねている。
 もっとも、彼の過去の行動を見れば世論を利用して何かを動かそうとしているのは容易に予想ができる。おそらくターゲットは原発ではなく他にあるのだろう。政権を揺さぶることで党として何かが得られるとは思わないが、党内政治の一環として誰かに協力している可能性はある。あるいは自らの政治家復帰を考えているなどという馬鹿げた想像もできなくはない。場合によっては野党を結集して再度二大政党制の復活などということを夢見ているのだろうか。と、これを書いていたら早速きな臭い情報も流れてきているようだ(http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20131112/plt1311121532003-n1.htm)。
 マスコミがここは報道しない靖国参拝の件に関する発言を見ても、国民の反応が最も良いと思われる場所をピンポイントでついているのは相変わらず見事である。今後徐々に狙いが明らかになっていくだろうが、それでも敢えて言わせてもらうとすれば個人的には小泉劇場第二幕はもはや必要ない。