Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

公立Fランク大学

 少子高齢化の波は私立大学の経営を大きく揺るがし始めている。もちろん、少子化の進展にもかかわらず大学の増設を認め続けて無駄な大学を増やし続けたのは多くの人が知るところであり、そのタイミングや手法はまずかったものの以前田中真紀子氏が文部科学大臣だった時に大学増設に待ったをかけたのは、心の中で納得していた人も少なくないであろう。
 どちらにしても現在私立大学の約40%は定員割れを起こしている(http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20130809-00000005-jnn-soci)。昨年よりはマシ(昨年は45.8%)になったらしいが、子供の数と大学の数のアンバランスが生み出す構造的な問題であって、根本的な解決を図る策があるわけではない。なお、最近の就職難の影響もあって実技系の大学の方が人気が高いようだが、これも専門学校とのシェアの奪い合いと考えられるかもしれない。
 日本の大学進学率はおおむね50%前後(2013年で58%程度)であるが、過去からの推移をみるとその上昇率はやはり高い(http://www.mr-as.com/data09.html)。ただ、大学に行っても就職先が容易に見つからないのではないかと考えて、そろそろ高卒での就職率が上昇し始めるかもしれないと感じている。ちなみに、もしアベノミクスの効果により景気が回復すれば、そののちに大学進学率は再び上昇する可能性があると思う。

 さて、世界の大学進学率は日本よりもずいぶん高い。オーストラリアは96%、アメリカは74%、韓国も80%近くである。これをもって、もっと日本も進学率を高めた方が良いという議論もあるかもしれないが、ここには制度の違いによるからくりがある(http://www.postsecondaryanalytics.com/us_highed_blog005/)。結論から言えば、現状の実質的な進学率はおそらく日本もアメリカもオーストラリアも大して変わらない。
 韓国はやや高いかもしれないが、これも国の特殊事情が関係している。そもそも韓国では大卒の就職率が50%程度しかないというほど極端に低い。ただ、それでも大学を出ないとまともな就職を得られないという切実な問題がある。
 日本としては、そろそろ大学進学率を一定の枠内(50%前後以下)に抑えるようなシステムを取っても良いのではないだろうか。ちなみに、私立大学でも定員割れを起こしている大学の大部分は、所謂Fランク大学と呼ばれる成績が芳しくなくても入学が可能な大学である。大都市圏の私立大学は、現状では概ね十分な学生を確保できている。
 これは人が集まらないから成績が芳しくなくても入学させるということでもあるのだろうが、公立大学の例ではあるものの国際教養大学(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%95%99%E9%A4%8A%E5%A4%A7%E5%AD%A6)のように特色を出すことで価値を高めた大学もあり必ずしも立地のみが全てではない。

 こうした状況を受けてか、近年徐々にではあるが地方私立大学の公立化が進んでいる(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E8%A8%AD%E6%B0%91%E5%96%B6%E5%A4%A7%E5%AD%A6)。事例としては公設民営大学の公立化が先導しているが、純粋な私立大学の公立化も検討が進められている。公設民営大学の場合には、自治体などが大学誘致を進めるために施設そのものを提供するなど、自治体としての学生の確保を至上としている面がある。
 また、学生としては私立大学よりは公立大学の方が学費が安いこともあって、公立化により学生の集まりも改善される。あくまで現状においてはであるが、地方Fランク大学が見事に再生を遂げるという結果にもなりうる。教職員からしても、業績の悪い地方私立大学とは待遇がかなり変わるであろうから、反対の声が上がることは少ないであろう。

 公設民営の大学が先導して公立化に走っているのは、スタートが公設であるということもあって自治体が強い意志を持っていることがあるが、地方私立大学が次々と公立化していく流れになれば自治体の負担は大きくなるし、加えて現状先んじることによって得られた差別化のアドバンテージはすぐに消えていく。公立化する大学が増えれば触れるほどに地方私立大学の生き残りの道は厳しくなっていく。
 結果として日本国中で私立大学の公立化が雪崩を打ち始めるかもしれない。この時生まれるのは何か?
公立のFランク大学が日本国中に広がるのである。さて、それは望むべき姿なのだろうか。