Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

退職金

 退職金(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%80%E8%81%B7%E9%87%91)は、定年後の生活の糧であり人生設計の要の一つでもあるが、雇用の流動化が今後進むことを考えたならば現在のスタイルは大きく変化せざるを得ない。そもそも、退職金は退職時の慰労金として位置付けられているが法律上はどこにも規定されてない。だから、退職金を最初から払わないと規定することも可能である。ただ、制度そのものが高度成長時代の終身雇用制とリンクしていたこともあり、終身雇用制の実質的な崩壊が始めれば退職金というシステムも存在が揺らぎ始める。
 すでにいくつかの企業では退職金制度を撤廃した(あるいは当初より導入しない)模様であり、その動きはまだそれほど注目されていないが広がりつつある。また、中小企業の場合などでは退職金を払う余裕がないところも少なくない。そもそも世界的にはそれほど見かけない制度であって日本独特と言えなくもない。もちろんその社会的意味が高ければ今後も継続されるべきであろうが、それが揺らぐ事態が近づいているのかどうかをしっかりと見ていきたいものである。

 現在様々な場面で雇用の流動化が議論されているが、それは退職金制度の廃止あるいは大幅な変化を促すものとなるだろう。そもそも長期の会社貢献への慰労の意味が大きいこの制度は、短期での職場移動に対しては実質的にほとんど機能しない。実際、退職金の算出が一定の期間在職したことが求められ、また在職期間が長いほど高くなるようなシステムが普通である。
 しかし、一方では今の日本社会はこうした退職金があることを前提に成立している面がある。老後の生活を年金のみで維持することは非常に厳しく、退職金に加えて個人の貯金や個人年金が推奨されている現状がある。テレビを見れば、退職後にこれだけのお金が必要になるといった番組はひっきりなしだ。

 かつては大家族として退職後には子供の世話になる家庭が多かった時代もあるが、今では独居老人が都市に溢れるほどにその形は崩れ去った。様々な問題は抱えつつも、それが社会を根底から覆すほどまでに至らないのは退職金や年金を含めた老後の保障制度があってこそである。ただ、もちろんそれが今後も継続できるのかは大いに疑問があり、それが政治の大きな課題となっているのは言うまでもない。
 それ故に、この退職金と言う制度についても現状の終身雇用を想定したものから、雇用の流動化を想定したものに制度として変更し、その上で残していくということを考えても良いのではないか。年金の不足は容易に解決できる問題ではないが、年金に加えて退職金を積み立てる形で別途残すことができれば、雇用の流動化による退職金廃止と言う大きな事態よりはショックが和らぐのではないかと思う。

 要するに、企業を変わってもあるいは雇用形態が変わっても継続できる退職金制度を構築できないかと言うものである。途中でいったん清算して受け取ることもできるし、あるいは継続的に積み立てることもできる。個人年金に近い思想だが、それを新しい雇用システムの時代に大幅に導入しようというものだ。
 現在の企業による自主的な退職金制度は雇用の本格的な流動化が始まれば、大いに揺らぐ(一部の特権的な社員のみが受け取る利権)だろう。様々な中小企業へのサポートがあるが、国家がこの制度を広げることで退職金に対するサポート(間接的な中小企業支援)をするということもできる。

 ちなみに公務員の退職金は法律で決められている。これも、雇用流動化の面から同じように見直すこともあってもよいだろう。
 思い付きの内容だからまだまだ熟考が必要だが、ふとこんなことを考えてみた。