Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

株高警戒2

 今年の3/7に「株高警戒(http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20130307/1362629444)というエントリを書いたが、その後も世界(と言うよりは日米欧)の株価の上昇は留まるところを知らない感じである。各国政府がバブル気味に措置を講じるであろうことについては、昨年の7月に「リ・バブル(http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20120711/1341932623)」として触れた。ここでこの株価上昇が世界中ではないのは、韓国や中国の株価がほとんど上昇していないことからもわかる。世界の資金はそれ以外の場所に移動している。
 加えてアメリカの景気回復を見越してドルが上昇している(特に円に対して)わけだが、原油価格はむしろ上昇している。通常は原油とドルの価値は反比例の関係にあるだけに、この動きは資金余りを反映した投機的な動きのようにも映る。

 バブルの頂点は誰にもわからない。まるでチキンゲームのようにお互いが競り合う形で上昇していくからだ。日本の株価上昇は欧米と比べればむしろ健全だとは思うのだが、それでも欧米が大きく下げればその影響は計り知れないだろう。むろん、世界の貿易が停滞すれば日本の景気も大きく影響を受けるのは当然のことである。
 確かに、現状一時的かもしれないがアメリカなどの経済指標が好転していることは世界の経済にとっては喜ぶべきことであろう。そして、その影響の先取りとしての株価上昇もまた素直に見れば悪い話ではない。しかし、先行指標としての株価上昇はその実態は期待でしかないのだから、期待が裏切られると思えばそれはあたかも砂上の楼閣のように崩れ去る。
 そして、ここに来ての株価の上昇スピードは明らかに実体経済を置いてけぼりにし始めている。先走りが過ぎるのだ。株価が上がれば企業の資金的な余裕は増え、投資家の懐は含み益により暖まり、市中の心理も好転する。アベノミクスの狙っているそれはこうしたメンタルの好転であり、今のところそれは上手くいっている。日本の場合には世界と比較して実態に比してメンタリティが低すぎることが問題であった。だからこそ、メンタルの改善は何よりも重要であったのだ。
 しかし、一方の世界に目を向けると状況は日本と同じではない。欧州の金融システムは未だに脆弱であり、ギリシャキプロスと続いた混乱も収束の目処は立っていない。スペインの失業率は未だに20%を大きく越え、若年層に至っては60%にすら近づいている。これは大恐慌時代と何も変わらない状況である。唯一異なるのは、(口ではいろいろと言いながらも)当時と違い今はふんだんにお金を供給することでそれを覆い隠していることと、仮に欧州がお金をばらまかなくとも他の国が供給することで流れ込んでいるという構図がある。
 そして、中国や韓国の株価が伸び悩む中でも欧州にお金が回っていると言うことは、世界の投資家は状況がさほど良くない欧州の方がまだマシだと考えていると言うことにもなる。

 現状は良いところを探して投資をしているのではなく、少しでもマシなところを探して投資をしている状況なのだ。「美人競争」ではなく「不美人ではない競争」が行われていると言うことである。このような競争は、決して正常な状況とは言わない。
 ただ、だからといって景気を少しでも上向けたい世界中は今取っている道を変えることなどできやしない。だからこそ、私は単なる株高のみが続く状況を危惧する。これが、株式が上下動を繰り返しながらゆっくりと変動しているのであればここまでの警戒心は抱かないだろう。

 とは言え繰り返しになるが、こうしたチキンゲームがいつ終着点にいつ到達するのかは誰にもわかるものではない。私は、願わくばそれは不幸な戦争などを引き起こしてしまう原因とならないことを願うばかりである。