Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

レーダー照射問題

 毎日新聞が、中国艦船が海上自衛隊護衛艦にレーダー照射した(所謂ロックオンと同義と考えて良い)ことについて、あたかも安倍総理が悪いような誘導をしていること(既に訂正されているので魚拓:http://megalodon.jp/2013-0205-2315-24/mainichi.jp/select/news/20130206k0000m030077000c.html)については、日本の言論に自由があることの証明であると共に、様式美の一種でもあるようなものだから私自身は今更それを強く戒めたいとも思わない。資本主義経済の中で、国民の要求に応えられない存在は徐々に小さくなっていかざるをえないという結末が待っているだけであろう。
 今回は、朝日新聞すらが社説で抑制的ではあるものの中国の行動を非難している(本日限定:http://www.asahi.com/paper/editorial.html)。朝日新聞ですらが擁護できなかったことを見ても、それだけ今回の行為が常軌を逸した戦闘(準備)行為であって国際的にも非難に相当するものであることが窺い知れる。ちなみにイラク戦争ではこのレーダー照射のみで反撃されているのは通常の行為である。

 もちろん専守防衛の日本であるからアメリカなどと違い、いきなりの報復攻撃を加えないのは仕方のないことだし、今回の場合には妥当だと思う。現状で中国側はレーダー照射を認めていないし、証拠をいくら提示しても捏造だと開き直るのは見えている。実際の行為から1週間以上かかったのは、証拠固めに時間がかかったためとされているが、一連の流れは理性的でかつしっかりと抗議の意志を見せていることも適当だと思う。民主党政権時代とは安定感の次元が違う。
 今回の行為を習近平副主席が知っての上での行為だとすれば、中国の侵略的意図は明白だと言うことになるし、逆に軍部の暴走だとすればこれまた一部の暴走を抑え切れていない現状の中国共産党執行部の統治能力の低下が心配される。
 ただ、日本とすれば挑発的意思を見せている中国から徐々にではあるが日本企業などを救出しなければならないので、東南アジアなど日本と同じように中国の脅威にさらされている国々との連携を強めるには丁度良いタイミングでもある。また、欧米をはじめ世界の国々にも中国の異常性を示す良い証拠が得られたとも言える(もちろん、世界の国々はそんなことは既に承知していることではあるが、一つの証拠がまた積み重ねられた)。

 戦闘行為を回避する事は、日本にとっても意味があることなのは間違いない。そのための努力として、日本側は安倍政権発足後すぐに特使を送ったが、逆に中国側は人を送り込み融和に努める態度を見せている訳ではない。口では友好を言いながらも実質的には匕首を突きつけているのが現状だ。それは、むしろ外交としては当たり前のことであって、なんでも友好で片付けられるほど世界は平和ではない。それを認めた上で、それでも平和を探っていくのが平和外交と呼ばれるものであり、それは紛争を一切回避する事ではない。最も大きな紛争を回避するために小さなそれを起こすことも辞さないという態度を見せるのも外交である。
 重ねて言うが、紛争を日本は望まないのは事実である。今日本の利益は平和によりもたらされている。しかし、日本が望む平和が他国が考える平和と同じではない。中国は、世界最大級の人身売買が行われている国家であり、信教の自由も言論の自由も存在しない一党独裁国家である。一党独裁でなければあれだけの大きな国を統治できないという面は確かにあるかも知れないが、逆に言えば国家を分割してもそちらの方が人々にとって良いものになるのであれば、現状の体制が全てでもない。
 日本は、中国共産党のためではなく中国大陸に住む人々が最も幸せになる道を隣国として常に考えていく必要があり、そのためには今の体制にきちんと言うべきことを言うことができなければならない。見かけ上の友好ムードなどは、真の意味での人々の幸せとは関係ないのだから。