Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

民主党負の遺産

年末の衆議院選挙が決定し、民主党候補は必死に自民党負の遺産が大きすぎて手に負えなかったと自己弁護に励んでいる。政権交代の時にその負の遺産の処理を任せて欲しいと言っていたのだから、普通に考えれば今更そんなことを持ち出すなど恥ずかしくてできないはずだろうが、どうやら彼らは都合の悪いことは忘れるのが得意であるようだ。
ところで、今最も問題としなければならないのは自民党負の遺産ではなく、民主党負の遺産ではないだろうか。結果的に、民主党は勢い込んで臨んだ自民党負の遺産処理に失敗したばかりでなく、新たな負の遺産を数多く積み重ねた。
その前に考えると、そもそも自民党負の遺産とは何なのだろうか。民主党議員の口から語られる内容の多くは、政府債務の多さや原発の処理などがあろう。さて、原発に関しては鳩山政権時代まで民主党もその音頭を取っていたのではないか。鳩山イニシアティブの下で福島第一を再稼働し、自民党以上のペースで原発増設を謳っていたと思うがどうだろう。福島に原発誘致したのは誰か。現在民主党にいる重鎮ではなかったか。
政府債務の増加は政権与党の責任であるという理屈は確かにその通りである。ただし、それは政権奪取後に初めて明らかになったものでは無い。政権交代前からさんざんそれを非難してきた内容だ。加えて、その債務を最も積み上げる原因となる公共事業政策をアメリカの意向を受けて作ったのは当時の自民党幹事長は誰であったか。ひょっとして、少し前まで民主党にいた誰かではないか。そもそも、政府債務を削減しろと国民に厳しく民主党は迫ったのか。それどころか、政府支出を自民党時代よりも増加させたのはここ3年のことではないか。

などと、書き出せばキリがないのでこのあたりでやめておく。自民党の負の責任を言っている議員は、結局のところその遺産に自分は関係していないと言い訳しているに過ぎず、民主党ならばそんなことは生じなかったと言うことを全く説明していない。関係できなかったのは、逆に言えば関係するほどの力がなかったと言うことでもあり、一定以上の年齢の議員は自らの力不足を嘆くべき事である。
さて、私が気にしている民主党負の遺産自民党政権の生み出したそれよりも、信頼性という意味で重く、その大部分は民主党それ自体に責任がある。
1)政治不信の拡大
 自民党時代には一定の倫理の下で制限されていた数多くの事柄が、民主党政権下でなし崩し的に悪化してしまった。議員の不祥事は数でも内容の悪さでも自民党時代を遙かに凌ぐが、多くの閣僚が献金や自らの支出に他国との不明瞭な関係が噂されていたが、これも何一つ明らかにはなっていない。閣僚を辞めれば追求されないというものでもあるまい。
加えて議事録を残さない政府議論を事例として残し、政権与党が審議拒否を行い、法的根拠の曖昧な組織を乱立してきた。これらは改革を銘打った粗暴な振る舞いに過ぎなかった。
2)外交全てにおける失敗
 自民党時代でも必ずしも良かったとは言えないが、それ以上に現状の酷さは誰もが認めることであろう。戦略的な外交というものが一切行われていない。それは、民主党が明確な外交姿勢を有していなかったからであり、一度崩れた関係は仮に自民党が再び政権に戻ったとしても修復するのは容易ではないが、民主党がそれを立て直すのはもっと至難の業であろう。
3)経済無策
 民主党政権において、私は独自色のある経済政策というのを挙げることができない。エコポイントは麻生政権のものを引き継いだだけだし、円高防止にも意味のない介入を繰り返したのみである。それは一時的なものに過ぎないが、それでも安倍総裁が日銀へのプレッシャーを口にしただけですぐに為替が反応したのは、逆に言えば民主党政権が何も為替対策で有効な手立てを打っていなかったという証にも見える。現状維持のためにいろいろとやったかもしれないが、少なくともそれは最低限の仕事であって成果などではない。
民主党が行ったのは、子供手当にしても高校無償化についても個別のばらまきに過ぎず、公共事業と比べても経済波及効果は大きく劣る。公平厳格主義は、結果的に社会のダイナミズムに水を差した。

マスコミは今までの立場上、今すぐ民主党負の遺産を取り上げることはあるまい。しかし、私はこの負の遺産は決して軽んじられるものでは無いと強く思う。そして、多くの国民もそれを感じているからこそ、民主党への批判の声が止まないのだ。