Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

中国は覇権を握れない

中国経済バブル崩壊が公然と語られ始めた(http://sankei.jp.msn.com/world/news/121111/chn12111123530011-n1.htm)。以前からもその指摘は少なくなかったが、信用できないはずの中国の各種統計データすらがその傾向を少しずつ示し始めている。中国の成長余力はまだまだあるという人も未だ少なからずいるし一面ではそれも真実だと思うが、だからと言ってこれまでの8%成長が続くと断言できる人は少ないであろう。
そもそも13億人以上と言われる中国の人口は世界のおよそ1/4を占める。それがずっと高成長率を続けると言うことは世界経済が猛烈に拡大し続けることと同義であり、そんな消費に今の地球に可能な供給が対応できるとは思えない。仮に現状の拡大を継続できたとしても、最終的には資源の奪い合いに突入することになりそれが足かせとなって結局成長は鈍化する。

それ以前に、中国の現状の体制は仮に経済が上手くいっても多くのひずみを抱えている。まず、少子化の状況はすこぶる深刻である。長く続いた一人っ子政策のため、日本のそれをずっと上回る少子高齢化の進行が中国では進んでいる。これは韓国も同じではあるがほんの10〜20年後には大問題となっているであろう。世界的な戦争でもあって一気に中国が覇権を握れればこの少子化が社会に巨大なひずみを巻き起こす前に世界の王者になる可能性はあるが、いくらアメリカの国力が低下しつつあるとは言ってもこの10年で中国がそれを上回れるとは思わない。中国という巨大国家は、自壊してしまうためのタイムリミットが迫っている。
また、温家宝の蓄財問題で明らかになったのは軍や政府高官への富の集中である。それ自体は以前よりわかっていたことではあるが、そのレベルが数値を持って明らかになったことが大きい。温家宝ファミリーで最低2000億円と言うことは、政府全体で考えればおそらくその100倍くらいは行くであろう。
そして、こうした政府高官は自らの家族を海外に送り出しており、同時に財産の多くも秘密口座などを用いて海外に置いていると言われている。それはある意味で人質を差し出しているに近い。
中国国内では情報統制によりシャットアウトされているとは言え、今の時代あらゆるツールを用いてこうした情報は広がっている。温家宝の件はおそらく内部抗争の手段として太子党側からのリークではないかと想像されるが、この暴露は諸刃の剣である。なぜなら、太子党側の方が人民から追求される側にいるのだから。ただ、現状では泥沼の暴露合戦には至っていないようだが、そこに至ればおそらく体制の維持は相当に難しいであろう。
中国という大きな国家を維持しようとすれば、内部の体制維持に大きな権力などの力が必要なのは間違いないし、現状の共産党体制が人民解放軍という最大の武力を実のところ外ではなく内に向けても誇示せざるを得ないのは理解できなくはない。

どちらにしても、中国の軍は外部にはデモンストレーション、内部には実行力というのが最も感じるところである。なぜならば内部の動乱は体制の揺らぎにつながり、自らの現状の地位を脅かす現実的な脅威であり制圧の必要性を認めるものである。外部については、内部の問題から目をそらし上手くいけば権益拡大につながるが、それでも党や軍の高官の財産を守る戦いではない。むしろ、それを損ねる危険性の方が高い。
今の中国共産党人民解放軍幹部がどれだけ国家のための志を抱いているかにかかるのだが、子弟や財産を海外に多く出しているという話を聞く限り、近隣諸国に向けた威勢の良い言葉も眉唾物ではないかと感じてしまうのだ。
もちろん、日本としてはそれで油断して良いわけではないが、少なくとも将来の中華帝国を予想する一部の経済人が思うほどに中国が覇権を握る可能性は高くないと思うのである。