Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

「ネトウヨ」って何?

流行語大賞にノミネートされた中に、「ネトウヨ」、「ステマ」、「ナマポ」などが含まれているという(http://singo.jiyu.co.jp/)。全部で50選ばれた言葉の中の3つであるので決して多いというわけではないが、それでも時代を反映した言葉としてこれらが選択されるというところから、今の時代が有している病理が垣間見える。これらはいずれも現代社会の問題ある部分というネガティブな響きを持って用いられているということが、排他的な社会とならざるを得ない閉塞感を代表しているのではないかと思えるのだ。
そもそも「ネトウヨ」とは「ネット右翼http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E5%8F%B3%E7%BF%BC)」の略語であり、実際にに街宣車などで示威行為をする右翼とは異なり、インターネットの言論上(特に匿名を守れる範囲で)愛国的な言論を駆使するもの達のことを言うが、「ネット右翼」という言葉自体は何も今年生まれたというものでもなく歴史は古い。2005年頃から用いられるようになったと言われており、移り変わりの激しいネット社会においては結構な歴史を誇る言葉でもある。
基本的には侮蔑語として用いられており、すなわちそれを用いるもの達がいるという訳でもある。一般的に「ネトウヨ」認定されるものは、保守的・愛国的な論を張る人から外国人に排他的な言葉を使う人まで幅は広い。逆にそういう意見を有している人たちが自分で「ネトウヨ」と名乗るわけではないのだから、「ネトウヨ」というレッテルを張りたいものが存在すると言うことでもある。一般的には左翼的な思想の人たちが用いていると言われているが、その実態は正直言ってよくわからない。ネタとして遊びで使っている人も多くいるだろうし、用いられ方は非常に幅広い。

しかし、考えてみればレッテル張りというものはレッテルを張ることにより自分の主義主張をより有利に運ぼうという意思により行われる行為であり、多くの場合は自分の立場が不利であるあるいは不利になりそうだというようなケースに用いられることが多い。
だとすると、「ネトウヨ」という言葉が跋扈する現状は逆にそれを嫌う人たちにとって、どうも具合が悪い状況が広がっているという認識があるからではないだろうか。確かに、外交では多少タカ派的な発言が目立つ橋下大阪市長や石原前都知事などが政治家でも必ずしも際立て目立つ存在ではなくなりつつあるようにも感じるし、その発言が浮いたものとして軽く流されるのではなく、社会的なレスポンスが高まっているのはニュースなどを見ていてもよくわかる。
橋下市長が、朝日新聞毎日放送の記者を口でやり込める姿に喝采が送られるのは、別に記者をやり込めたと言うことではなく左翼的な主張をやり込めたという面が少なからずあるだろう。同じような話は公務員労組に対する処分などが市民の間で大きく支持されていることからもわかる。
それはこれまで成功モデルとして賞賛されてきた日本のシステムが、そろそろ疲弊してきていることを多くの人が感じ、その要因の一つとして左翼的な思想が問題の一つとして認識され始めているからではないか。

時代の空気の中に、社会主義的資本主義として成功した日本のスタイルがこれ以上続けられないとして日本人全体の大きな意識の変更が行われているとすれば、「ネトウヨ」として糾弾される特定の存在を生み出しているのは世論から蒸散している雰囲気が源泉であり、今後もそうした言論は続くであろうしそれ故にレッテル張りとしての「ネトウヨ」連呼はますますと強まっていくかもしれない。
ただ、純粋な保守思想が外国人を排斥するわけではない。一種のナチズムのような外国人排斥運動は、幅広い社会の右化傾向(私はそれでようやく中道やや左くらいだと思うが)に水を差すことにもなるだろう。それでも混濁を巻き込みながらも社会全体の思想は、グローバリズムから逆方向に動き始めているように感じている。それを極論に走らせないことは十分注意すべき問題でもある。