Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

保育所過剰時代の到来

待機児童問題が持ち出されたのはかなり前になるが、幾度かの国会議論を経て現状では全国で次々と保育所の増設が行われている。待機児童が減ることは、社会の側からみれば女性の社会進出が今後減少することがあきらかな生産年齢人口の補填に役立つと見ることが出来るし、デフレ社会において収入が減少した家計側からしても母親の就労の機会は家族としての収入増につながる。
それ故に、局面のみをみればWIN-WINの関係にあると考えても良いかもしれない。しかし、他方で保育所経営の面から言えば公立の保育所では一定以上の給与は保証されているものの、数多く増設されている民間保育所は低賃金問題なども常に物議(http://careerconnection.jp/biz/studycom/content_398.html)を醸している。要するに、保育所の要望は少なくはないがそれがそこで働く人たちの雇用環境を向上させるという状態には至っていない。

ところで、待機児童問題を議論する時に一つ気になることがある。本当に保育所は不足しているのかと言うことだ。実を言えば、かなり以前より保育所定員は保育所利用者児童数と待機児童数を加えた数を上回っている(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/09/h0907-2.html)。あくまで数の上のみで言えば定員は足りているという訳だ。もちろん、待機児童問題が湧き上がっているのは保育所の設置場所とそれを希望する人がいる場所のミスマッチである。
それではここ10年弱保育所数はどの程度増えたかと言えば、平成14年から平成21年の8年間で定員数で約18万人分も増設されている。比率で言っても10%弱は増設されている。これだけ増設されていながら、実を言えば待機児童数は決して減っていない。それは、不況の長期化(あるいは女性の社会進出)によって保育所利用を希望する人が増加し続けているからでもある。これまでは専業主婦として子供を育てていた人が、収入の減少に伴いパート等に出ようとしているからではないかと推測される。もちろんそれが全てではないだろうが、現状における待機児童の恒常的な増加はやはり不況の影響が少ないとは考えにくい。

仮にそうだとすれば、現状凄い勢いで待機児童を解消するのだと続けている保育所の増設は、少子化の影響に加えて景気回復が為されれば一気に過剰状態になる危険性を秘めているとも言える。もちろんそれが予測されるからと言って待機児童を放置して良いという話ではないが、単純な保育所の増設に邁進するのではなく将来的な過剰状態に対して利用形態の変更を(例えばデイサービスなどの老人福祉施設など)踏まえた対応を考えておくべきではないだろうか。
もちろん、施設を容易に移動することができないため、保育所が必要とされる地域と老人福祉が求められる地域にも差異がありミスマッチは生じうる。現状、民間保育所は増設されているが公的保育所はむしろ数を減らしている地域も多い。公的サービスとしてのそれを減少させていれば需要減の時にも民間経営に問題を押しつけられるという見方もできるであろうが、それでも政策として問題が出ることが予測できるのであれば、応じた対応を準備することが必要だろう。

さて、待機児童問題が将来的に引き起こすであろうことについて、政治は何かを考えているのであろうか。