Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

サッカーブラジル戦

結果的に言えば惨敗であったが、同時に収穫がありまた世界レベルの高さも感じさせられた試合であった。フランス戦と同じように、もっと勝負にこだわり守りに徹すれば4点も取られることがなかったかも知れない。ただ、フランス戦は練習試合にもかかわらず受け身になってしまったことを反省点としていた。すなわち、仮にフランス戦でもフランスが最初からハードなチェックに来ていなかったら、同じように日本は惜しい攻めを見せて結果的には惨敗していたという可能性もあると思う。
得失点の経緯のみを見ればフランス戦とブラジル戦は大きく異なるが、世界との距離を感じると言うことで言えば近い感覚を受けたとも言える。
ボロ負けではあったとしても、日本の今の力を見せて受け身になることなく攻めた結果としてのものであったことは、フランス戦よりも自分たちの立ち位置をはっきりと認識することができたというメリットがあったであろう。ある意味で不都合な真実が晒されてしまった訳ではあるが、その上で直面したレベルの差により心が萎えてしまうのか闘志をかき立てられるのかが今後の日本代表の成長に大きく影響するであろう。

個別の選手の問題を挙げることもできるであろうが、とりあえずブラジル戦で気になったのは明らかに個のレベルの違いであった。本田や香川が通用したかどうかと言う個々の差以上に全体としてのレベル差が気になった。ブラジルの選手は一人でボールキープできるし容易にパスをカットされない。対する日本は、キープ力も弱くパスも何度もカットされていた。そして、シュートの精度の明らかな違い。今の日本の守備力も攻撃力も、ブラジルを抑え崩すには不足しているとはっきりと判るものである。
いずれにしても、日本のミスと言うよりは個のレベルでブラジルの選手達は全て日本の上を行っていたというのがはっきりとわかったということである。親善試合であるとして気を抜いたならば後半はもっと凡戦になっていたかもしれないが、むしろ後半に日本が大きく崩されたことでブラジルが日本を戦う価値のある相手だと認識してくれたのが気休めでもあった。

現在のブラジルはかつてのスーパースター軍団よりは小振りだと言われている。FIFAランクでもW杯予選免除もあって14位と数字の上ではかつてのブラジルから見れば信じられないほどの低さである。ただ、昨晩見せつけた能力はスーパースター軍団であった時と何ら変わらない強さでもあった。
では、日本代表として何も得るものがなかったのかと言えば決してそうではない。ブラジルは確かに多くの点を得たが、多くは試合を完全に支配しての圧倒的な得点ではなくカウンターであったと言うことだ。日本がボールを持たされていたという面もあるだろうが、途中までは日本のパスサッカーは一定の機能を見せていた。ある程度本気のブラジル代表に、試合になるような形に持って行けているのである。ブラジルは8点取っていた可能性もあったが、日本も3〜4点を取ってもおかしかった訳ではない。欲を言えば岡崎のような裏へ抜け出す動きが不足していたことが攻撃のバリエーションを狭めていたと思うが、それでもブラジルに軽くいなされた訳ではなく、明確な差はあるものの単なる惨敗の無意味な試合ではなかったと思う。

とは言え、最初から書いているようにいくつか明確な個別の問題点が明らかだったために負けたのではなく、全ての面で劣っていた故に負けただけに追いつくのが容易ではないことも明らかになった。個の力を組織でカバーするという欧州相手の考え方では、劣るフィジカルを勝るスピードなどで埋めるのが日本の戦術である。ブラジルではその両者が負けていた。だから差を埋めるには個の力を地道に上げていくしかないということになる。加えて、後半早々の失点で失ったであろうメンタルの弱さもある。同じ日に行われたワールドカップ欧州予選で、スウェーデンはドイツに4点先制されて追いついた。イブラヒモビッチと言う絶対的なエースがいたこともあろうが、決して負けないという諦めない気持ちが生んだ結果ではないかと思う。その経験は、やはりまだ日本には不足している。
その課題は重く厳しいものかも知れないが、本当に世界に挑戦する気があるのであれば地道な積み重ねしかない。どんどんと本気の世界を経験してRPGのように経験値を積み重ねて欲しい。策によりブラジルともっと接戦を演じることも不可能ではないかも知れないが、だからこそ策なしの現状に明確な差が現れたことを良い教訓と感じたい。