Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

青色光は本当に効果があるか

東京大学の広報で次のような発表がなされている。
青色灯設置により、列車への飛び込み自殺が減少 (http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_241009_01_j.html
自殺率が大幅に減少したという報告は何かと興味深いものである。
もともと、この効果についてはイギリスが先進国である。犯罪抑制に効果(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%B2%E7%8A%AF%E7%81%AF)があると、グラスゴーなどで街灯に青色光照明が採用された結果をもって言われている。もっとも犯罪抑制効果が本当にあったのかどうかは明確ではないようだ(麻薬使用者が視認性の低下により流出したことが犯罪率低下の原因という意見もある)。これが日本のTV番組などでも報道されて、奈良県などで実験的に導入されたらしいがその積極的な評価は聞いていない。数パーセントの犯罪率の低下が見られたとの報告もあるようだが、顕著な結果が出た訳ではないらしい。実際、日本防犯設備協会などの実験ではほとんど効果が見られなかったり、一定期間後に却って犯罪率が上昇していたりという結果もあっただけに、今回の報告は犯罪抑制ではないにしても一定の成果をみたものとして意味があるだろう。

ただ、同時に気になる事がある。青色光で精神的に落ち着くという事はあったとしても、それは青色光を受けているときのみではないかという事だ。すなわち、自殺を抑制する事は出来たとしてもそれはその場所限りの事であり、結果として自殺する場所を別に移動させるものであるとすれば、虫除けスプレーのような効果を示しているに過ぎない。
もちろん、公共交通としての列車の運行を妨げる飛び込み自殺を防止できる事は、社会的には一定の意味を有するしその意義は私にも理解できる。ただ、グラスゴーの麻薬常習者をよそに追い出したとされるケースと同様に、社会全体と考えれば一種の社会的厄介者の居場所を無くそうとしていると考えれば、それは自殺者を犯罪者と同じように扱っている感じもしてちょっと気になる。

青色灯はあくまで様々な施策全体の一部であると考えるならば理解できなくはないが、特定の害虫や雑草を寄せ付けないように農薬をまいてもそれに抵抗できるスーパー害虫やスーパー雑草(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2101W_R20C12A9XX1000/)が生まれるように、一時的な対処療法は問題を根本的に変えるものではない。
青色光の効果をより確認する事および他の措置と上手く組み合わせる事で、これまで手が打ちにくかった社会における問題を解決できる可能性があるかもしれないことを考えれば、今後の研究の進展を期待したいものである。

ただ日本人の習性というか、、、日本国中が青色に染まるのは、、、できれば止めてもらいたい。