Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

台湾とのICJ共同提訴

尖閣諸島が日本固有の領土であることは疑いようがない(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html)。それは、明の時代に琉球の領土として見なされていたこと(http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120717/plc12071708420009-n1.htm)、中国が1970年頃までの報道でも明らかに日本領土として扱っていたこと(1953年人民日報)、台湾も日本領土として公式文書まで発行していること(中華民国駐長崎領事の感謝状:http://homepage2.nifty.com/tanimurasakaei/syasin.htm)からも明かである。しかし、現状はそれを領土的野望により紛争化すると共に将来的に何らかの利益を得ようとしているのもまた事実である。
日本は、明確な領土に関して国際司法裁判所への持ち込みを検討する必要もないとの立場であり、それは正論として理解できるものではあるのだが、ちょっと裏技的な方法を使うことで現状を打破できないかと考えてみたい。

そもそも中国が尖閣諸島を自国の領土と言っているストーリーは、昔から中国の領土であり日清戦争中に無理矢理奪われたという筋書きであった。ただし、尖閣周辺の海域でのトラブルはむしろ台湾(中華民国)との間で続いてきたものである。最初は漁業権に関するものであったが、1968年に国連調査で資源の存在が指摘されてからは、台湾、中国とその領有権を強く主張するようになった。加えて、中国がこの海域の領有権を主張すること自体には、台湾の安全保障上の問題があると台湾内でも反対意見が強い。まあ、沖縄が日本に強制的に併合されている的なことまで言い始めている状況では、そんなことは何の縛りにもならないかも知れないが、とりあえずは歴史的経緯で言えば日本と台湾の間の紛争であったとうことがある。
こうした中、台湾がICJ(国際司法裁判所http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8F%B8%E6%B3%95%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80)に提訴するという動きについては既に報じられている。
台湾が尖閣問題でICJ提訴言及「ブーメランを受ける日本」=韓国(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120823-00000007-scn-kr
韓国メディアは竹島問題と絡めてブーメランと評しているが問題は必ずしも同じではない。台湾内でも李登輝元総裁は尖閣は日本領だと明確に指摘している。また、主張の状況が三すくみであることも竹島問題とは異なるであろう。

このあたりは意見が異なる部分もあるあろうが、日本は尖閣周辺の資源を台湾と共に開発することを見込んで、ICJへの提訴を中国を抜きに行うことはできないだろうか。もちろん、日本固有の領土をICJに付託するなど許されないという意見があることは承知している。しかし、近隣では唯一親日的な台湾と共に今後も共闘していくことを考えれば、少し面白いかもしれない。
確かに現実を考えると国民党(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%9B%BD%E6%B0%91%E5%85%9A)の馬英九主席はむしろ中国との経済協力を強めているのでこんな話には乗らないだろうし、そもそもアメリカが日中だけでなく台中も緊張状態に持ち込むようなことを認めるとも思えないが、どのようになるかを想像してみるくらいは悪くない。
要するに中国をのけ者にして、二国(台湾は地域として扱われているが)間の争いに絞って国際的な決着を付けてしまうと言うものだ。台湾からすれば現状まず欲しいのは漁業権であり、その上で可能ならば資源問題にも噛みたいという所だろうし、開発技術力を有する日本と組むことはマイナスではない。
判決は第三国を拘束するものではないため、形式上は中国はその判決に異議を唱えることはできるし、その判決に従わなければならいのものではない。ただ、そこで行われた事実認定は国際的な権威を間違いなく持つこととなる。要するに現状関係国が好きなことを言っている状況だが、裁判を経ることで採用される証拠などが限定されるのだ。加えて、台湾は中華民国であって清の後を引き継いだ政府である。そこが裁判に敗れることがあれば、その結果は実質的に現在の中国を縛ると言っても良い。

ここまで書いておきながら恐縮だが、実は大きな問題が一つある。このICJの当事者適格は原則として国家であることが定められている。現時点では、国際的には台湾を国家としては認定してない。ICJに提訴するためには、中国とは独立した国家として宣言をしなければならないが、独立派ではない現在の国民党がそれを実際に推し進める可能性は低いだろう。もちろん、中国が台湾のICJ提訴など許すまじとあらゆる手を使うことも予想される。
ただ、この動きを進めると言うことは日中の紛争となっている尖閣問題を、台湾も含めた問題と出来ることで単純な反日運動とは意趣を変えることができるかも知れない点がある。実際には台湾を人身御供に出すような感じで必ずしも気分がよいものでもないが、日本と台湾が連携して今後の東アジア情勢に対処するという橋頭堡とすることができるならば、今の尖閣紛争もあながち悪い話ばかりではないかも知れない。