Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

昔日本で今韓国

一見すると、政府が焚きつけたとは言え今や主戦論はマスコミに移っている。何のことはない、韓国マスメディアの竹島騒動後の論調のことだ。李明博大統領がこの後の収拾をどのように考えていたかはわからないが、現状を見る限り韓国マスコミが事態の収拾を許すような状況にはない。結果的に落としどころのハードルが随分と上がってしまった。新聞紙面にも激しい論調ばかりが目立っている(時事ドットコムhttp://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012082400582)。
元々、韓国の新聞の論調は対日本を除けば比較的冷静で論理のバランスの取れたものが多いのだが、こと日本に対することだけは極端に感情論が先走っている傾向があった。現状では、もはや分析と言うよりは宗教に近いような論理の入り込む余地がない感情論むき出しの記事ばかりである。
転じて日本のマスコミはと言えば、抑制的な意見が非常に多い。一応形式的には韓国の非礼な態度を窘めているものの、両国ともに冷静さを呼びかける内容が主流である。

考えてみれば、かつての太平洋戦争へ突入した時の日本は現在の韓国のようにマスコミが先導して主戦論を唱えたものだ。今でこそ見る影もないが、反戦論調の旗手である朝日新聞が最も過激に戦争を煽っていたことは既に多くの人が知っているであろう。
それを踏まえた上で、現状の日本メディアが冷静さを訴えていることがバランスを配慮した行為なのかと言えばこれまたそうではない。元々の火付け役は朝日新聞をはじめ日本のマスコミなのである。現状の韓国の論調は、スタートとして竹島問題から始まったが同時並行で従軍慰安婦問題があり、加えて靖国などを巻き込んだ謝罪問題が天皇陛下への侮蔑の言葉に繋がった。
しかし、こうした問題は日本のマスコミが日本政府を叩くために捏造し誇張してきたものであり、その動きこそが現在の韓国の日本への甘えにも似た行動を間接的に引き起こさせてきた。これらを考えたならば、まるで他人事のような態度を取っているのは違和感すら感じられる。
実は、このマスコミと似たような立場の存在がもう一つある。それはアメリカである。アメリカも建前上は日本と韓国共々民主主義国家としての同盟を常々訴えているが、現実には日本が韓国や中国とあまり近づきすぎないように様々な方法を用いて日韓(および日中)を小さな紛争状態に留め置くことを心がけてきたわけでもある。もちろん積極的にそれに関わるのではなく、紛争を防ぐような努力をしないという不作為が主であって、一番の責任があるというわけではないものの日韓や日中の連携を防ぎたいという思惑はおそらくあったであろう。

どちらにしても、冷静さを叫ぶ現在の日本の一部新聞社には著しい偽善の香りが感じられ、ネット上ではその雰囲気をもって叩かれ続けている。冷静さが必要なのは事実であるが、それが相手のこれまでの行動を認めることと同義ではない。意地の張り合いを止めるべきだというのは日本よりは韓国に、そして世論を煽る韓国マスコミに向かって主張すべきことである。
現状の韓国マスコミは、太平洋戦争前の日本の新聞社と同じように事実ではなく感情で煽っており、逆に現在の日本のいくつかの新聞社は結局偽善的な別の感情を押し出している。考えてみれば、ベクトルが異なるだけでどちらも事実と論理を主張するものでは無い。

偽善が全て悪いと言うつもりはない。偽善も程度に違いはあるが社会における必要悪の一つであり、その存在は必ずしも否定されるものでは無い。ただ思うのは、昔日本で盛んだった主戦論をマスコミが張って政治家がそれに流される的な状況が今の韓国にあり、既にそれを経験している日本においてもマスコミはと言えば問題の構図を冷静に判断して対処方法を見付けたのではなく、単にベクトルを変えてお茶を濁しているに過ぎないと言うことが気にかかる。
戦争を煽るのが必要ではないし、感情的になるのが良いわけでもない。そもそもこうした紛争は現代社会において基本的には感情的になった方が損するものだ。ただ、感情的にならないと言うことと事を構えないと言うことは全く別である。私達が過去の敗戦から最も学ばなければならないのは、戦争に負けたことではなく、負けるような戦争に突入したことなのだから。