Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国の焦り

数日前のエントリでも書いたが、ここ数日静まったものの終戦記念日前の韓国の騒乱は毎年のこととは言え常軌を逸したレベルで行われた。民間が騒ぐ分には特段大きな外交懸念となるものではない(日本人としてはそれでも許し難い)が、今年の場合には韓国の大統領がその主役を張っている。政権末期のレームダック状態に基づく反日なのは間違いないが、日本生まれの大統領である李明博は場合によれば大統領を辞めた後日本に来るという選択肢もあったであろう。
多くの人が知るように韓国大統領の権限は非常に強く、それ故に在任中の利益誘導は茶飯事であり、政権政党が代わった時には離任後には犯罪者として裁かれるといったことを既に何度も繰り返している。李明博大統領も既に実兄の問題が取りざたされており、同じような道を歩む可能性は非常に高い。
すなわち、現時点で朴正煕元大統領の娘である朴槿恵(パク・クネ)氏が有力候補であるセヌリ党http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%8C%E3%83%AA%E5%85%9A)から次の大統領が選出されれば投獄までは避けられるかもしれないが、野党である民主統合党http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%91%E4%B8%BB%E7%B5%B1%E5%90%88%E5%85%9A)の候補などが選出された場合は厳しい処分が待っているであろう。もっとも、その結果が死刑判決になっても恩赦されるのが通例である。

さて、李明博の今後の命運はともかくとして私は今回の大統領の無謀な言動は、韓国の現状の行き詰まりを示してるのではないかと思う。それは国家としてもそうだし、結果的に運営する政府のトップとしての大統領の行き詰まりにも繋がっている。
現在の韓国という国家は世界からの資金を引き入れることで成立している。逆に言えば、世界の資金を引き留め続けるべく国家運営の順調さを常にアピールし続けなければならない。アピールする相手は当然ながら世界の資本家である。アピールは未来の可能性を示すことか、若しくは着実な配当によって行われる。もはや新興国ではない韓国(現状成長率は3%を切っており日本と変わらない)は、未来の発展を主張してもそれを容易に信じさせることはできないのだから、日本から富を奪うかもしくは現状稼いでいるという結果を見せ続ける他はない。
しかし現実には韓国経済の足下は非常に脆弱である。それは国内経済振興よりも輸出に対する依存度を大幅に高めることでの成長を図ろうとした結果でもある。アメリカの輸入は増加せず、頼りにしていた欧州も輸入は激減している。もちろん中国への輸出は最終的な欧米への迂回なのでこれも同じ状況だというわけで、韓国がいくら強弁しても一部の巨大企業以外の状況が芳しくないのは誰もが知っている。そもそも輸出企業中心の政策を取ってきたのだから内需については日本以上に悪く、失業率も日本よりも随分高い(若年層では20%を越えると言われる)。

内需を疎かにして外需に頼っての成長を目指してきたために、いざ世界経済が低迷した時に取れる選択肢が少ないのだ。李明博政権は、低迷した世界経済において日本のシェアを奪うことで韓国経済の生き残りに賭けた訳だが、それは逆に言えば無知故の不作為という形でそれを許容した現民主党政権にも責任がある。タイトロープを渡るような微妙な操作によりウォン安(特に円に対する)を維持し続け、その上で法人税を下げ輸出企業優遇措置を採用し先に欧米との二国間のFTAを推進する。全ては日本のシェアを奪い取るための戦略である。
日本はその戦略を知っていながらもバカ正直に現状を受け入れて、対抗措置を取るのではなく自分たちの努力により状況打開を図ることに集中してきた。その結果が、現在の電機産業の低迷でもある。リーマンショック前と比較して半分近くになったウォンと同等に勝負できるはずなど元々無いのだから。
しかし、拡大志向の韓国経済は同時に多くの借り入れ(投資も含めて)により規模の維持をしてきた部分がある。もちろんそれは中国も同じことであるが、それ故に成長率の減速はそのスタイルの終焉に繋がる。だから、現状は進みようのない袋小路に陥っていると言って良い。需要減の中で唯一できることが日本のシェアを奪うということであるが、それもそろそろ限界に達しようとしている。
現状の過剰な日本叩きは、もちろんこれまでの反日政策の結果でもあるが、同時に日本という敵国を作ることで現状の日本以上に混迷した状況を誤魔化す目くらましでもあるのだ。その上、こうした感情的なドーピングというものは容易に慣れてしまうため常に新しい刺激を必要とする。
日本がなぜ強硬な態度に出ないかというのを訝しがる人も少なくないが、基本的には日韓貿易は大幅な日本の黒字であることを知っている人は多い。要するに、日本からすれば韓国は実質的な迂回輸出の経由地なのである。それが日本の利益となっている間は効果的な貿易経路を守るのはある種当然の行為である。戦後の日本はアメリカに対してもそうであるが、名目上のイニシアティブを相手に与えても裏できちんと稼ぐという方法を取り続けてきた。近年は経済的にも押されているが、少なくとも少し前まではそれで上手く言っていたのだ。韓国に対しても同じ方法を取っていたとしても何もおかしくない。それ故に、韓国の少々の暴言や無礼も甘受し、また様々な優遇措置を与えてきたのである。そしてそれ自体は韓国の政権中枢部もよく知っていたはずで、名目は韓国に華を持たせながら実質は日本が利益を得るという構図の中でせめぎ合ってきたとも言える。

それが壊れ始めたのは、結局のところ背伸びして気持ちが大きくなった韓国の驕りと、これまでどおりの裏で操作する方法が続くと考えていた日本の慢心が理由であろう。だから、韓国の新聞や政治家からは日本など影響はないという声が次々と出てくるが、これこそは韓国の過剰な自己認識の結果である。韓国経済当局はおそらく冷や汗を流しているに違いない。
一方で声高に日本不要論を叫び日本を辱め、同時に他方で日本の援助やバックアップに期待する。むしろ、今後は韓国経済が傾けば日本もそれなりの損害を受けるぞと言う脅しに変わってくるだろう。ただ、それはまさに北朝鮮と変わらない瀬戸際外交ではないか?
現状は、国内状況が悪いのでそれを誤魔化すためにもっと反日の声を上げさせてくれというメッセージにしか取れない。その担保は、韓国の混乱は日本の損でもあるというものであるとすれば、いくら何でも都合が良すぎるであろう。瀬戸際外交に走らざるを得ないというのは、韓国の焦りの露呈でもある。
一方で、瀬戸際外交に対するのが如何に難しいかは北朝鮮を見ればよくわかる。その上で、現状中国に近づきつつあるとは言え自由経済陣営の一国である韓国を見捨てるという行為は、これもまた国際社会的にも許容され難い。下手すれば破綻時にはその処理費用などを日本に押しつけられる可能性も少なくなく、もちろん日本が韓国内に保有している巨大な債券も紙くずと化す。
日本の損失を最小化しようと考えれば、結局のところ時間をかけて韓国からの資本引き上げをするしかないが、それが雪崩を打てばまた韓国経済の弱体化を誘発するだけに対策は容易ではない。ただ、どんな方法を取るとしても急いで処理するよりは時間をかけた方が良いことは間違いないであろう。
もっとも、韓国政府の態度軟化に合わせてすぐ矛先を下げるようなことも実質的な反日黙認と取られるためすべきではない。むしろ、慌てずじわじわと処理をしていけばよい。韓国の戦術はヒットアンドアウェーなのだから、日本はじりじりとロープ際まで追い詰めるように対処するのが妥当であろう。