Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

アンフェアを行きすぎた形で是正する

大津市のいじめ事件が世間を賑わせている。ネット上では、いじめたとされる生徒達の実名ばかりかその親族の構成まで暴露されている。ネット上の情報収集は、数多くの人が義憤心で共同作業することによりクラウド的な効果が発揮されて、ある意味効率的だ。
バラバラに集まった情報のうちで信用に値するもののみがマッシュアップされ、結果的に洗練された情報収集に至る。これが犯罪捜査に上手く活用できれば大きな力になるわけだが、残念ながらあまた存在する事件全てに機能するわけではない。多くの場合には、共有認識としてある不公平感が源泉として働いているのであろうと思うのだ。だから、それが共感できるものとしてうねりを持った場合にのみ大きく動く。その琴線に触れなければいくら一部が騒いでも大きな動きにはならないのだ。

さて、いじめの事態については正直なところ何が真実かは私にはわからない。現在で回っている情報を基に想像すれば、教師や教育委員会の腑抜けぶりというか動きづらい状況があるのかも知れないが、大阪で始まった教育機構改革と合わせて、閉鎖的すぎるそれが多少なりとも使いやすいものに変わってくれるような変化を期待したい。
更に言えば、警察の動きの不可解さも少々気にかかる。テレビで検察OBの人が強調していたらしいが、いじめられた当人が死んだから動かないというのであれば、殺人事件は全て捜査できないことになってしまうと言う言説には同意する部分がある。面倒だと思ったのか、あるいは別のしがらみがあったのかはわからないが、安心した生活を保証するためにはそのあたりの状況については今後の進展を期待したいと思う。

ただ今回の事件を見て思うことは、それなりの圧力を使えばこれまでなら隠しおおせると思った事柄でも、それがネット社会の琴線に触れれば大きなしっぺ返しとして跳ね返ってくると言う事実であろう。まさに情報化社会の現実でもあるのだが、権力者がもっとも気にしなければならないのが自分だけでなく親族を含めての個人情報管理だということなのだ。
子供の不始末は、親族全体に跳ね返りかねない。もちろん、それがネット上の大きなうねりになるには一定の条件があり、おそらく大津の事件以外でも何らかのプレッシャーに泣き寝入りしなければならない人もいるだろう。
そして、その権力というものは伝統的な権力(政治、経済)だけでなく、弱者権力(各種圧力団体)の方がそろそろ社会における敵として大きくクローズアップされつつあるのかも知れない。これまでタブーとされて触れられてこなかったものが、近年徐々に議論の俎上に載せられることが増えてきた。ネットの匿名性は、そのうねりの主流として自己の安全を確保しながらも、権力には向かう手法としてはやはり効果があるというわけだ。弱者の武器となりつつあるとも言える。

問題は、この弱者の武器は弱者の集合体が扱うからこそ歯止めが利きづらい。不公平を是正するという義侠心には一部同意する気持ちは強いが、でもそれが行きすぎたならばやっていることは権力側のそれと何も変わらない。このあたりの歯止めがどのように社会に組み込まれるかが今後の課題と言えるのではないだろうか。