Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

出産医療危機

ここ最近は医療問題がマスコミを賑わすことがやや減少した感じもする。しかし、財政上の問題(医療費問題)は別にしても日本には大きな医療危機が近づいている。特に、産婦人科医の減少、小児科医の減少は深刻である。ただでさえ少子化が問題とされてるのに、産婦人科医の現象が生じると言うことは国家そのものの存続にも影を落とすこととなる。
産婦人科医や小児科医の減少は、単純に医療リスクの増大と勤務態勢の困難さが理由である。出産とは基本的に医療行為であるが、助産婦などの伝統もあることより自然分娩を酒興的に崇拝する傾向も少なくない。出産時の母子の命のリスクを如何に軽減するかを考えれば、自然分娩がよりベターであるという見解には至りがたいと思うのだが、まるでその方が素晴らしいように主張されるのには違和感を抱かずにはいられない。まず、命を確実に守ることが重要だと思うのだが。

さて、出産はケースにより母子の命を奪いかねない困難な状況を伴う医療行為であるが、そこには新しい命の誕生に対する希望が込められるため、老人医療とは明らかにレベルが異なる家族側の心情がある。そのため、医療訴訟は感情的になりかねない危険性がある。もちろん、医療ミスは医師の責任として問われるべきものではあるが、私はそれが個人の心情により訴訟として為されるのではなく社会制度として社会全体が問うべき問題ではないかと思う。
現状においてはマスコミは個人的心情を根拠として、そこから社会問題に広げていく傾向が見られる。例えば、大淀病院事件(waiki:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%B7%80%E7%94%BA%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E6%B7%80%E7%97%85%E9%99%A2%E4%BA%8B%E4%BB%B6)や大野病院事件wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%9C%8C%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E9%87%8E%E7%97%85%E9%99%A2%E7%94%A3%E7%A7%91%E5%8C%BB%E9%80%AE%E6%8D%95%E4%BA%8B%E4%BB%B6)などでは共に医師の過失はなかったと裁判において無罪判決が出されている。共に、毎日新聞が大きく医療ミスを騒ぎ立てたわけだが、その結果産婦人科医を辞める人が増加したという話は多い。少なくとも、裁判によるリスクを考えれば医師を続けるメリットは大きく減じるであろう。
遺族側の悲しみが理解できないわけではないが、一定の歯止めがなければ感情論での訴訟が頻発することの弊害はバカにならない。

加えて、最近は出産における飛び込み診療の問題が増加している(sankeiWEB:http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/120524/wlf12052423460022-n1.htm)。飛び込み出産wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9B%E3%81%B3%E8%BE%BC%E3%81%BF%E5%87%BA%E7%94%A3)は、妊娠経過の診察を経ずにギリギリになって出産のみを産婦人科に依頼する行為であるが、これも産婦人科医にとっては安全の保証が難しくなる。加えて、困窮により診察を受けてなかったとすれば出産費用の踏み倒しすら存在する。不景気の為す技と言えなくもないが、結果的に医療を国民から遠ざけるものとしているとすれば残念で仕方ない。
結果的には、地方に行けば行くほど落ち着いて出産できる体制が取れなくなっている。そのため、出産のためにわざわざ都会にまで出向くという社会的なロスが生じ始めている。一度の診察で出産可能であればそれほどの手間ではないかもしれないが、定期的な検診のために毎回旅行するとすればその労力は計り知れない。
待機児童問題などが理由で少子化が進んでいるような言い回しも聞くが、現実には結婚しない人が増加してる事が最も大きな少子化の原因である。しかし、今後出産そのものが忌避される風潮が広まるとすればその影響はこれまでの比ではないだろう。

私たちには、安心して子供を産み育てる環境が必要である。出産医療の問題はそこに大きな問いかけをしているように思う。

「出産が医療行為だという認識も重要だろう。」