Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

国際基準における中国・インドとの共闘

日本と中国は多くの分野において今後ライバルとなる存在同士である。現状でも政治体制も経済状況も大きく異なるが、それ故に補完的な状況が作られているがそれが東アジア共同体などと言う夢想を実現できるものでもない。本来共同体は同レベルの経済状態である国家が目指すことのできるものであり、そこに差がある場合には一方的な支配かあるいは寄生となる可能性が高い。

現状、日本企業の生産拠点として一定のバランスを確保している中国ではあるが、それも中国国内の人件費が低い間に限られ、人件費の上昇に応じてより低い地域への移動が常に続いている。日本と中国の製造業における共同作業は中国が大きく成長しないという前提で成立しているのである。
一方で、中国は将来の大市場としての魅力を有している。しかし、その魅力は中国人民の給与が向上するという未来にある。その時には生産上の共同作業は難しくなってしまうのだ。
現実には、共産党政権の現状において日本企業が十分な利益を得ることは今でも容易ではない。中小企業などの苦労は日本に残っても中国に進出しても別の形で続いている。

それでは日本と中国は共闘できないのかと言われれば、私は一つ大きな共闘できる分野があると思っている。それこそが、世界基準を策定する作業だ。金融のグローバルスタンダードはアメリカが支配し、工業規格のスタンダードは欧州が支配する。日本がその主導権を握れるのは決して多くはない。もちろん中国もである。
日本が先行した技術であっても、グローバルスタンダードを欧米に握られてしまえば日本の優位さなど容易に覆されてしまう。実際、何度も苦杯をなめさせられてきたのは皆の知るところであろう。しかし、この面でなら日本と中国はおそらく共闘できる。日本の先行技術を中国と共に世界基準化するのだ。もちろん幾ばくかの技術供与は必要となるだろう。その面で中国との折衝は間違いなく必要だ。できればインドを含めた三国による共闘ができれば理想的である。

工業基準コンソーシアムなどを結成するのである。中国とインドを加えれば世界人口の1/3以上をカバーする。この巨大市場が先に先進技術の基準を決定してしまえば、欧米が容易にこれを覆すことはできないのではないか。いや、実際にはそれを覆すべく様々な妨害はあるだろう。それでも先行して基準を定めることができれば大きなアドバンテージを受ける。日中印の企業はこの基準に基づき製造すれば巨大な投資がフイになる危険性も大きく低下する。
これは、何も工業基準だけではない。金融関係の取引基準でも、保険制度の導入基準でも良い。要するに基準化による主導権争いを、消費地という人口アドバンテージを持って勝ち取ろうというのだ。そして日本はその中で技術的な指揮を執る。先進技術は日本からスタンダードになるとなれば、世界の先進研究はおそらく日本に集まってくることになる。これは企業誘致政策としても悪くはない。

もちろん、私などの素人が考えることなのですでに十分研究されているであろう。ただ、寡聞ながらこのような戦略について政府からはあまり聞こえてこない。できればもっと果敢に動いて欲しいものである。

「戦略眼の有無は国家の命運を左右する重要事項である。」