Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

日本のリサイズ

人口減少の速度に徐々に勢いがつき始めている。総務省の発表によれば、昨年10月時点で前年比マイナス25万9000人ということである(sankeiBIZhttp://www.sankeibiz.jp/macro/news/120417/mca1204171540010-n1.htm)。同時に65歳以上の高齢者の比率は23.3%に増加した。予定通りというか、予想通りに推移していると言っても良いだろう。こうなることはわかっていたので、今この数字を見て騒いでも仕方がない。それよりは、この事実を受け入れた上でどのように対処するかを現実的な方法で考えることが肝要であろう。

正直なところ、将来の国のありようについて議論は噴出するものの政治はこれまで踏み込んだ判断をしてこなかった。年金は、、、生産人口は、、、などと通り一本の問題を議論は行われるのだが、そこでは結論として「こうすればとりあえず大丈夫です」と当面の場当たりな対応しか示してこなかった。もちろん口では「100年安心プラン」など景気の良い言葉が並びもしたが、今となっては空虚さが募るばかりである。
加えて、税と社会保障の一体改革というシステムの組み替えを叫ぶ声もあるものの、少なくとも人口減少を真正面から見据えた議論は行われているようには見えない。目の前の暗雲を振り払うので一杯といった風情である。
一方で、現状のシェアを守りたい産業界からは移民によるシェア維持を強く叫ぶ声が聴かれたが、これも欧州での文化摩擦に見られるような失敗の前には今ひとつトーンが上がらない。パッチワーク的な移民は考えられなくもないが、今後減少する日本国民を全て移民により補うとすれば、数千万人の移民を受け入れることになる。果たしてそんなことを誰が意識しているであろう?

だとすれば、今日本が考えるべき事は日本人の日本という国に対する認識のリサイズではないだろうか。今それが精一杯肥大した日本という国が存在する。この規模を維持できるのがよいに間違いはないが、それが人口動態的に叶わないとすれば、一時的か恒久的かは別にして縮小した日本を明確に意識すると共にそれに向けた施策を本格的に進めていくことが重要になる。
ただし、それが国民生活を豊かにしないモノであってはならない。質は向上させながら規模のみを縮小する。すなわち、アメリカ製品を日本化するようにより高性能でかつ小さなものに変えていくのとイメージ的には同じことになる。それは日本人が最も得意とすることではないか。現実には国の規模を上手く縮小するのだから、小さな製品を作り出すのとは訳が違うのだが、小さくて良いものを生み出す事ができる能力を日本人は持っていると信じている。向かうべき方向を、日本の未来と定めて動き出す時が来た。

国の社会システムの縮小は、単なる首切りによる縮小ではなくリストラクチャリングである。今までのシステムが今後も生きる部分は最大限利用しながら、規模が変わった時に通用しなくなる部位を徐々に切り捨てていく。切り捨てると言えば言葉はきついが必要性の高いところを残していく形での規模の縮小である。
日本という国の人口が大きく減るとすれば、それに応じて日本が豊かに暮らすために必要な資金も減少する。要するに一人当たりのGDPあるいは収入が高ければ、それに応じた豊かさを甘受することが可能になるわけだ。今の状況を維持することが必須ではない。
もちろんスケールメリットというものは存在し、大企業であるからこその有利さは同様に国家においても言えることでもある。ただ、規模が同じであっても質が劣化してしまえば意味はない。果たしてこれまで同一性を最大限有効に利用して質を高めてきた日本という国が、異質なものを入れてその質を維持しうるのであろうか。
それを可能とする人もいるだろうが、欧州での惨状を見る限りアメリカのような融合は容易ではない。もちろんアメリカについての人種のるつぼなりの問題は今も抱え続けている。何も、それがバラ色の未来を見せるわけではない。

人口が減る。人口ピラミッドはここ30年くらいは改善しない。逆に言えば30年ほど経てば人口は減少するが出生率が極端な落ち込みを見せなければ一定の落ち着いた人口分布になるのも事実である。もちろん、その後の人口増加に再度期待したいところではあるが、今どんな効果的な手段が打たれても数十年後までその効果を受け取ることはできないのだから、それを見越した計画をきちんと考え将来像を描く。その時に、これまでと同じという甘い期待などは抱かない。
別に難しい話ではない。元々、世界的に見れば人口密度は非常に高い日本である。人口が減少したからと言って三流国家に没落するなどと恐怖感を煽っても、よほどのへまでもしない限りそんなことはない。
現状維持や現在の状況を頭から一度消し去り、その上で日本のリサイズを考える。私としては、軋轢を生みかねない移民などによる人口維持政策よりはずっとそちらの方が良いのではないかと思うのだ。

「『小さくてもきらりと光る国』・・こんなフレーズが昔あった。量ではなく質を追求する数に任せた国家とは別の姿を探るのも悪くはない。」