Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

尖閣買収発言を考える

単純に考えて、尖閣諸島を東京都が買うとしてもそのことはギリギリまで秘匿する方が望ましいのは誰にでもわかる。東京都が買い取る場合には都議会の承認が必要であり、どちらにしてもいつかの時点でそれが表に出るのはその通りだが、下手な横やりを入れたくなければ承認即買い取りという流れが望ましい。今年中の買収を明言していることからも、現時点であえてそれを明言する理由が他にあると考えるのが素直ではないかと思う。
もちろん勢い勇んで発表したという考えもなきにしもあらずだが、同時に地権者の代理人が東京都は信用できる旨の発表をしており、示し合わせたと考える方が良いように思うのだ。

仮に両者が示し合わせてそれを行ったとすれば、新党がらみの動きとは捉えにくい。地権者がそこまで石原都知事に配慮する理由は考えられない。だとすれば、一つに考えられるのは日本政府へのプレッシャーである。従来、地権者は民主党政権である内には政府には売らないと公言していたと聞く。真実のほどはよくわからないが、だとすれば現状慌てて民主党政権である日本政府に売ろうという話ではないだろう。むしろ、尖閣諸島に対する国内的な動きを加速させるためと考えた方が腑に落ちる。すなわち、海上自衛隊海上保安庁の充実に対する後押しである。

以前から、中国漁船が今年の6月頃を目処に大量に押し寄せて上陸を図るのではないかという噂は流れていた。中国共産党政府としては、そうそう容易に強引な手を使いたいわけではないだろうが、軍部の暴走を抑えにくくなっている可能性はあろう。仮に暴発であっても、これまでの発言から一度上陸をすれば事は引き返せない。これは、実のところ日本にとっては最もまずいケースである。理由はどうであれ実質的に中国人民を送り込まれてしまえば、その後の日本の動きは大きく制限されてしまう。明確に軍隊が動いたのであれば日本の相応の対処ができるだろうが、民間人レベルの動きを軍隊が睨みを利かせる形で取られると、先に攻撃的な手を打てない分だけ日本が不利になる。中国にその制限はないのだから。

現時点での発表は、日本政府の動きを加速すると共に中国の一部勢力が暴発するのを中国政府が抑えざるを得なくなるように仕向けるためかと邪推してしまう。
日本政府としては問題を矮小化したい。中国政府としても矮小化した上で自らのみがメリットを受けたい。だから問題を大きくすることで双方とも睨み合いにならざるを得ない状況に追い込もうとしているのではないかと言うことだ。
領土を守るという名分は存在するため、仮に現政権が中国に対する配慮を大きく意識していたとしても今以上に領土防衛に動かざるを得ない。すなわち、今回の行為は中国に対する威力行為と言うよりは、日本政府に対するプレッシャーと考えた方が良いだろう。
実際、官房長官がすぐに政府による買い取りに言及している。ただし、地権者は中国に甘い現状の政府を信用しない姿勢を続ければ、政府としてはより領土防衛に力を注がなければならないと言う訳だ。仮に民主党が大きく中国に配慮するとしても、自衛隊などの配備をしてしまえばそれを無理矢理止めるには別の名分が必要となる。

この石原発言に中国や台湾が過度に反応すればするほど、日本政府としては領土防衛に意識を割かなければならなくなる。このあたりが今回の騒動の狙いではないだろうか。
もちろん私の邪推が当たるはずもないだろうが、仮に国民の多くが今回の発言を支持するとすれば、その意味を民主党政権と外務省は真面目に考えなければならないだろう。

「波風はないに越したことはないが、相手が多少の波風に縛られないのであればむしろ波風は大きな方が対等の関係を維持できる。」