Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

自爆クリンチ

サーチナ情報なのでどこまで本当かはちょっと割引して考えるべきであろうが、こんな話が報道されていた。「日本が竹島の主権を主張すれば、未来の日韓関係は白紙に=韓国」(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0407&f=politics_0407_004.shtml

どこから何をどう突っ込んで良いのかが困ってしまうような対応ではあるが、韓国外交通商省のチョ・ビョンジェ報道官ということなので、一応政府の正式なコメントと言うことになる。
まず、竹島の帰属問題について言えば韓国政府が国際司法裁判所への付託を拒否し続けているという時点で彼らの焦りを強く示唆しているのではあるが、韓国としてはなるべく国際社会を巻き込まないという戦略をこれまで採ってきたはずである。日本の尖閣諸島の場合と同じように韓国政府の立場は竹島(彼らから言えば独島)には領土問題は存在しないという態度であったはずである。それ故に、日本政府がそれを荒立てることがないように最大の腐心をしてきたという経緯がある。
日本が敗戦後に力を失った時に、韓国は竹島対馬を自国領土だから返せと連合国に迫った。そして、連合国(というかアメリカ)の当時の判断は竹島対馬も韓国の領土であった歴史的事実は認められないので、返還しないというものである(ラスク書簡http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%AF%E6%9B%B8%E7%B0%A1)その後韓国の当時の大統領であった李承晩が海洋資源確保のために竹島を含むラインを韓国の占有であると、サンフランシスコ平和条約締結前の日本が占領下にある時点に竹島を占拠した(このラインはその後日韓漁業交渉で解消されたが竹島の占拠は続いている)。

両国の歴史的な見解に争いがあるのはある意味当然であろうが、法的には上記のように日本の国土として扱われているのは間違いない。だから、韓国としては実効支配している現状をなるべく長く維持することが重要なのであり、同時に国際司法裁判所の判断を仰ぎたくない理由でもある。
ただ、韓国国内での人気取りのために反日政策が利用され、その教育が永らく続いた故にこうした事実関係を冷静に扱えない人が韓国には増えてしまった。一方で、日本は敗戦後のトラウマにより地域紛争に繋がりかねない領土問題をタブー視する雰囲気が続いたこともあろう。もっとも、昔から日本は教科書で竹島は日本の領土であると言い続けているのであって、最近になって言い出したわけではない。それを取り上げ始めたのが最近の韓国であると言うことであって、日本はタブーの感覚が弱まってきた故の言論の高まりがあるのみである。

私から見れば、韓国は竹島問題について明らかに戦略を間違いつつある。これを両国のボトルネックにしてはならないはず(なるべく軽い問題として扱うべき)なのに、今では韓国の方が様々な問題の前提として竹島問題と従軍慰安婦問題を持ち出し始めている。
どちらも法的には日本が負ける要素はない。
大きな国際政治問題とすることは明らかに韓国にとって不利なテーマであるはずなのに、これまでの日本側の配慮に期待する形でルビコン川を渡りつつあると思う。日本は、戦後のトラウマを克服しつつあるのにもかかわらず。

民間やメディアが騒ぐのはまだわかる。日本も掲示板などでは極論が日々飛び交っているのだから。ただ、それは政府の方針であってはならない。政府間では仮に心理的なわだかまりがあったとしても建前上未来志向の発展を言い続けなければならないのだから。
韓国側から強気の発言が出てくるのは、近年の発展を根拠にした勢いとかつての日本の過剰な配慮に対する甘えの両者が存在する。しかし、じっくりと見れば日本の態度が徐々に変わりつつあることは理解しているはずである。騒ぎ立てれば日本が引く時代は既に終焉を迎えている。それは、韓国がまだ経済力を付けていなかったからこそ許された我が儘でもあり、ある程度の力を付けた今も通用するロジックではないのだ。

だから、冷静に考えればお互いに妥協を探る形での現状維持を図るのが韓国が取るべき方針であるはずなのに、仮にそれを勘違いしているとすればおそらく今後の交渉は韓国の思う形には全くならないであろう。経済でもそうなのだが、韓国という国は勢いが付いた時には稼げる限り稼ごうというかさにかかるパワーがある。しかし、それは同時に守勢に回った時の弱さと引き替えの強さでもある。
そう考えると、彼らが現状を正確認識し上手く立ち回るという未来を想像するのは難しいかも知れない。逆に言えば,瀬戸際的かつ自爆的に日本と交渉尾しようとする姿勢は、むしろ北朝鮮にも近いかも知れない。北朝鮮には何だかんだと言いつつも中国がケツ持ちをしているのだが、実を言えば韓国のケツ持ちは日本とアメリカなのである。通貨スワップしかり、韓国の経済的な土台は日本とアメリカが支えている。おそらく、今後は中国の傘の下に入るという脅し(交渉)をかけて来るであろう。その雰囲気が今回の日本との未来関係を白紙に戻すという言葉に溢れている気がする。

ただ、それは日本にとっても痛みがあるものではあるが、韓国の方が痛みが大きいという意味で自爆テロに近いと思う。日本政府は、こうした自爆テロに屈してはならないのは言うまでもない。

「メンタリティの違いなのだろうが、韓国の長期戦略は一体どうなっているのであろうか?」