完結する漫画の価値
一時期は漫画を読めば馬鹿になるとすら言われていた時期もあったが、さすがにそこまでの極端な声は聞こえなくなったようである。私は子供の頃から漫画を読んでいるが、一番最初の頃に読んだ漫画は漫画ではなく絵本である。なぜか漫画は低く見られていたのに、絵本の社会的価値は低くなかった。もちろん商業的にはその価値とは反比例である。
TVの視聴率とも近いかもしれないが、見せたくないという評価が高いものほど人気が高かったりするものだ。それは社会生活を送る上で抑圧されている何かを代償的に解放してくれるからであろう。実際に自分がすることはできないが、その状況を漫画という形で楽しむことは可能なのである。一部にはそれを勘違いして漫画の内容などに触発される人間もいるかもしれないが、これも本人の資質が非常に大きいと考えている。
さて、漫画は一時を楽しむ娯楽である。小説やテレビドラマなども類似した娯楽を提供しているが、漫画はその丁度中間に位置している。小説ほど想像力を必要としない手軽さが有り、ドラマほど現実的でない気軽さがある。逆に言えば、小説で自在に想像できるほどの自由度はなく、ドラマほどのリアリティはない。前者を心地よいと思えば漫画は最高に楽しい娯楽であり、後者に重きを置けば漫画は中途半端な娯楽だと言うことになるであろう。
ただ、漫画には小説やテレビドラマと少し違う気になる点がある。それは、一定の完結を見るかどうかについてである。小説でも長期連載になるものは少なくなく、どちらかと言えば最近はライトノベルなどを中心にテーマが曖昧なままダラダラと続けるものも増えてきているが、基本的には完結を見るというのが本道である。テレビドラマについても中途半端かもしれないが、1クール(あるはもう少し長く)でまがりなりにも完結する。
ところが、連載を中心にする漫画はその終わりが見えないものが結構多い。時に人気作となって長期連載する作品などでは、当初作者が終わらせるつもりであった(であろうと思える)展開を越えてまで連載が継続しているモノも少なくない。こうしたものを見るに付け、連載ものの弱点が凄く感じられる気がしている。
だから、私が漫画作品を評価する視点の中で結構重きを置くのが、作品として作者の意図通りの終わり方をしているかがある。もちろん、ギャグマンガなどではその脈絡など必要がないかもしれない。ただ、ストーリーものにおいてはその意識は非常に強い。
刹那的に見るにはその勢いやキャラクターの個性などで十分なのかもしれないのだが、作品として評価しようと考えると逆に世の中で人気があるとされる作品は急激に輝きを失ってしまう。逆に、そこまで勢いはないもののコアなファンなどに評価される作品の方が価値が高いように思えるのだ。
さて、そのような私なりの独断による評価基準に基づいていくつかお薦めの漫画をピックアップしてみたい。完結しているかどうかに重きを置いているが、終わり方は中途半端であっても発想の面白い作品や、期待も込めて連載中のものも選んでみた(順不同)。
<特にお勧め:個人的に繰り返し読んでみたい作品>
●岩明均:寄生獣・・・個人的にかなり完成度が高いと評価している
●村上もとか:JIN-仁-・・・TVドラマにもなったが、発想と展開力が面白い
●新谷かおる:エリア88・・・やや長引きすぎの感じもあるが、それでも引き込まれる
●横山光輝:三国志・・・あえて解説の必要も無し
●松田隆智×藤原芳秀:拳児・・・少年の成長ストーリーとしてバランスが取れている
●真刈信二×赤名修:勇午・・・硬派だがよく練られている
●大場つぐみ×小畑健:デスノート・・・後半が惜しい
<その次くらいのお勧め:たまには読み返してみたい作品>
●小林まこと:柔道部物語・・・笑いも含みながら意外と真面目
●酒見賢一×久保田千太郎×森秀樹:墨攻・・・土臭さがよい
●宇仁田ゆみ:うさぎドロップ・・・飄々とした感じと最後の展開の意外性
●鳥山明:ドラゴンボール・・・引き延ばしすぎでなければ良かったのだが
●二ノ宮知子:のだめカンタービレ・・・ほんわかできる
●ほったゆみ×小畑健:ヒカルの碁・・・終わり方がやや唐突
●小山ゆう:がんばれ元気・・・王道だと思う
●河合克敏:モンキーターン・・・深くないけどテンポがよい
●佐藤マコト:サトラレ・・・続編も中途半端だが、発想は面白い
●細野不二彦:ギャラリーフェイク・・・ストーリーの一貫性に欠けるが
●柴田ヨクサル:エアマスター・・・絵も笑いも偏っていると思うが、でも面白い
●石ノ森章太郎:サイボーグ009・・・SFの金字塔
●青木雄二:ナニワ金融道・・・リアリティある裏社会ものの先駆け
●曽田正人:め組の大吾・・・ベタだが熱い
●楳図かずお:漂流教室・・・恐怖ものとして評価している
●塀内夏子:オフサイド・・・これも王道
●いわしげ孝:花マル伝・新花マル伝・・・かなり熱い
●三田紀房:ドラゴン桜・・・着眼点が面白い
●浦沢直樹×勝鹿北星:MASTERキートン
●高森朝雄×ちばてつや:あしたのジョー・・・スポーツものの金字塔
●王欣太:蒼天航路・・・三国志の異聞として評価できる
●手塚治虫:ブラックジャック・・・超大物だがストーリー性がやや欠ける
<連載中だがお勧め:但し上手く完結するかは不明>
●三宅乱丈:イムリ・・・独特の雰囲気が面白い
●山田芳裕:へうげもの・・・目の付け所がよい
●森恒二:自殺島・・・生きることを考えさせられる
●石井あゆみ:信長協奏曲・・・軽妙なのに意外と深い
●岩明均:ヒストリエ・・・今後の展開に期待
●末次由紀:ちはやふる・・・少女スポ根系
●藤井哲夫×かわぐちかいじ:僕はビートルズ・・・今後の展開に期待
●井上雄彦:バガボンド・・・ちょっと精神論に浮遊中
●曽田正人:capeta・・・カーレースの王道
●あずまきよひこ:よつばと!・・・ほんわか意外系
●河合克敏:とめはねっ!-鈴里高校書道部-・・・目の付け所がよい
●美内すずえ:ガラスの仮面・・・言わずと知れた超大物
漏れもあるかも知れないが、お薦めできる作品だと思う。
今週のお題「オススメのマンガ」