Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

デフレと生活保護と

まず最初に断っておくが、生活保護セーフティネットとして必須の制度であって、制度そのものを否定するつもりは全くない。その上で、それでも増え続ける生活保護が結果的に地方財政や国の財政を悪化させていく可能性および、それを生み出している現状のデフレについて考えてみたい。

既に生活保護が200万人を超え、3兆円近くが生活保護費に充てられている現状については様々な報道機関が取り扱っている。ただ、そこで言われる話は生活保護世帯数の増加と、その一部にある不正受給の話が中心である。不正受給自体は許されるべきものではないので言語道断の話ではあり厳しく取り締まられなければならないが、それで全てが解決するわけではない。誰も、生活保護の大部分が不正受給とは思っていないであろう。
また、年金との格差の問題も大きく報道されているが、これも年金のみで生活するとすれば低すぎるという問題も同時に抱えている。生活保護費減額の必要性も考えなければならないが、それ以上に生活保護受給者を減らすことが最も大きな問題なのである。

デフレの進展は、所得格差と言うよりは雇用格差を生み出している。世の中の報道では所得格差として報道され、公務員が優遇されているなどと言われているが、デフレは雇用を縮小させる。結果的には給与の減少が徐々に生じるのではなく、失業者が増えることで所得が安定した層と所得が極端に失われた層に分かれるのだ。国民全体としては平均値として所得平均が下がっていると言われるが、それは皆の所得が下がっているのではなく一部の人たちが職を失うことで平均値が下がっている傾向が強い。
ところがこの失業者の数は、就業者から比べればまだ少ない。だから、デフレの問題は数の上だけで言えば深刻に感じている人は多数派ではない。モノが安く買えて良いではないかという議論がまかり通るのはこのためである。

さて、雇用を失い収入の目処をたたれた人たちが再び容易に雇用を得ることができれば何の問題もないが、実際にはデフレ下で新たな雇用を見付けるのは非常に困難である。あっても元の給与とは及びもつかないであろう。結果として、生活保護に最後の活路を見出そうという人が増加する。
もちろん、生活保護の多くは単純に雇用を失った人ではない。高齢者世帯もあれば、母子家庭もある。ただ、傾向としてはあらゆる形態において生活保護は増えている。高齢者が突出して増えているわけでもなければ、母子家庭が増加しているわけでもない。

実はこの状態、生活保護か増加しなければ安定した給与所得者や、ある程度以上の資産を持った上で年金を受け取る者たちにとっては都合がよい状態である。だから、生活保護問題は不正受給にポイントを当てて取り扱われがちになる。なぜなら、今のままで生活保護費が増加しなければいいのだから。でも、おそらくそうはいくまい。デフレの深長は、どのような手を打っても生活保護者の数を大きく減退させるには至らない。
なぜなら、デフレは国民全体が徐々に貧しくなるのではなく、国民の一部が貧しくなるのだから。そして、それはすなわち痛みを一部しか感じてないと言うことでもある。
生活保護世帯の増加は、密かに進行するデフレの大きな負の面の露呈ではないかと思う。

「臭いものに蓋をしても、臭いものが増えれば蓋から溢れ出る。根本的に臭いものを減らさなければならない。雇用を増やさなければならないのだ。」