Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

税と社会保障の一体改革の前提とは違う

民主党自民党公明党の提案を丸呑みして、2年間限定の公務員給与引き下げ(平均約7.8%)を人事院勧告と同時に行うこととしたようである。
これは昨年の国会でも議論されており、両者を加えての引き下げを自民党公明党が求めていたのに対して、民主党人事院勧告分は下げないと突っぱねたため決裂していたものである。決裂のせいで、公務員給与が引き下がらなかったのは野党が譲歩しなかったためというようなミスリードがマスコミからよく流れていたが、単に民主党が支持母体である公務員労組(さらには連合)に配慮した結果に過ぎない。

ところで、この公務員給与の引き下げは現在消費増税の前提として扱われている民間給与と公務員給与の不公平是正に基づく給与引き下げとは基本的に関係ない。あくまで震災の復興資金捻出のための一時的な措置に過ぎないのである。
しかし、おそらく政府はこれを消費増税のための公務員給与引き下げだとして扱って来るであろうし、マスコミもそのように報道する可能性は高い。
なぜならば、民主党の支持母体たるこれらの労組が民主党が公約としてきた人件費2割の削減など認めるわけがないからだ。実際、優先的項目とマニフェストで前面に押し立てて言ってきたにも関わらず、政権を取ってからそれを進めようとした気配は一切無い。検討を重ねるのみである。実際、一時期その検討すら先延ばしにしようとしていた。

震災があって、そのおかげでこの時限的な措置がようやく陽の目を見たものの、これも2年間のみの限定措置である。

さて私は既に何度も主張してきているが、最も大切なことは民間給与と公務員給与の差を埋めるために最も良いことは、民間給与を上げることである。しかし、グローバル経済の発展に伴い民間給与は世界との争いに晒されている。すなわち、より給与が安い諸国との競争が続いているのだから容易には上がりにくい状況にある。
だから、政府のこれまでの努力にも関わらず容易にそれは上昇しなかった。

では、共産党が主張するように強制的に最低賃金を上げればよいかと言えば、そうなれば多くの企業は今以上に日本から出て行くか、非正規雇用を増やすだけである。結果的に、それは一部の世紀雇用者の給与のみを守る存在と成り下がる。今でも問題なのは、民間でも大手企業の世紀雇用者の給与は低くない。問題は、中小企業などの雇用者、あるいは非正規雇用者の給与が極端に低くなっているため、結果的に民間の平均給与が下がっているのである。
そして、それが容易に解消される目処は立っていない。

だから、いつまでも民間と公務員の給与の格差を放置するわけに行かないが故の公務員給与引き下げなのだ。ただし、これも何度も書いているがこれにより財政支出削減を行うような馬鹿な真似をしてはいけない。引き下げた分、雇用からあぶれている人たちのセーフティーネットとして支出することが景気の下支え上必要である。
例えば公務員の臨時職員を雇用するなど、就労機会がない、あるいは極端に劣悪な給与環境にある人を救済して、社会の不公平感解消に用いるべきである。そうでなければ、公務員給与削減分景気がやはり悪化する。

なぜ、こんな当たり前のことが議論されずに発表されないのかが不思議で仕方ない。

「誤魔化されないようにしっかり見ておく必要がある。」