Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

夢は意識の抗体反応

睡眠中になぜ夢を見るのかについては諸説が溢れており、これが正解だというものはまだまだ確立されていない。
近年では、神経生理学の進展により睡眠中の内的・外的刺激が様々な記憶を呼び起こし、夢という形でストーリーを作り上げているとの説が主流であると言う。
(wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A2)
しかし、私はあくまで素人なので詳しい学説や臨床結果を知っているわけではない。それを承知の上で、自分なりに思ったことを少々書き連ねてみたい。

かつては浅い眠りであるレム睡眠時に夢を見て、深い眠りであるノンレム睡眠時には夢を見ないという意見が主流ではあったが、最近はノンレム睡眠時にも夢を見ていると考える研究者も多い。ただ、ノンレム睡眠時に夢を見ているのかどうかを証明する方法は容易には見つからないようである。
また、夢が夢であることを自覚している状況を明晰夢と呼ぶが、このケースでは夢を思い通りに操ることができることが多い。私も思い取りの夢を見た経験が何度かあるが、あくまで個人的な感想で言えばこのような状態の時は非常に覚醒状態に近いため、ほんの僅かな外的刺激により目が醒めてしまうことも多い。場合によっては再度眠りには言って同じように明晰夢を見ることが出来ることもあるが、強く意識しすぎるとそれが夢なのか妄想なのかがわからない状況になってしまう。

別のケースでは、例えば強い心理的ストレスを受けた場合、関連する内容を繰り返し夢で見ると言うことがある。これは、心理的負荷を軽減させようという反応ではないかという意見もあるようだ。
この反応には少々わかりにくい部分がある。悪夢と言われるように、夢が恐怖を呼び起こすケースがあるにも関わらず、心理負担を軽減する作用とは少々筋が通りにくい。

まず、夢に見る内容は基本的に最近の出来事と、強く刻み込まれた記憶がリンクして生まれているのではないだろうか。記憶とはいえど、それは必ずしも現実の記憶である必要はない。脳内では、おそらく事実の記憶も空想による想像も大きな違いはないだろう。最近の出来事は記憶の表層にあって思い出そうとすればできるが、雑多故に忘れられていることもあろう。これに加えて、重大な記憶だが普段は封じ込められているものが無意識のうちにmixされることもあると思う。ただ、この重大な事柄は普段精神の防衛機構によって封じ込められているケースが多い。その記憶の内容により、強く封じ込まれるか弱く封じ込まれるかはいろいろであろう。日常生活においてその記憶が普段の行動に心理的な動揺を引き起こすようなケースでは、防御反応が働き記憶の奥底に沈めてしまう。。。というか、その記憶へのアクセスを何らかの形で遮断してしまうのだと思う。
この普段封じ込まれている記憶が、夢という無意識の状態ではある程度封印が解ける。それ故、意識的には思いもしない夢が浮かび上がることがある。

ところが大部分の夢は目が醒めると忘れ去られてしまう。だから、多少気にはなっても普段の生活に大きな支障をきたすわけではない。これは、夢が記憶を改変して緩やかに浮かび上がらせることで、実質的に封じ込まれている記憶や事実(あるいは想像)に精神を慣れさせようとしているように感じている。
人は、この夢を悪夢と呼んだりあるいは嫌な夢と感じるかもしれないが、これは心の中に封じ込められた葛藤を緩やかに解きほぐす役割を担っているのではないだろうか。先ほども書いたように夢というものは結構忘れ去られるものである。だから、夢で思い出したからと言って普段に思い出すほどの心理的ダメージはかからない。そして、繰り返し見ることによりその記憶や事実に夢というクッションを挟んで接することができる。これは、意識化においては容易にできないことではないだろうか。

嫌なことは忘れてしまうというのは、口で言うほど容易なことではない。その記憶は意識が干渉して消し去ることなどできやしない。夢もこれを消し去ることなどできないが、その記憶に心を慣れさせることはできる。夢というものは、無意識が生み出す精神の防衛機構であって、それは触れがたい記憶に徐々に接することで衝撃を和らげる効果があるのではないかと思うのだ。場合に依れば多少ではあろうが精神的に都合の良いように記憶の改変が夢により行われる場合もあるだろう。
人は、年を経ると共に感受性が低下するのでそちらの方が封じ込めた記憶と接するために有効かもしれない。ただ、夢の効果を考えたとき結構馬鹿にならないのではないかと思っている。

「悪い夢だけではなく、良い夢も同じように慣れさせる。反芻は悪いことばかりではなく、衝撃を和らげ妥当性を強化する。」