Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

気になる矛盾

「将来の世代にツケを残さないため」
これが財政均衡論の最も一般的な主張であり、それを根拠として増税も実施され、今は延長されたが復興増税も当初10年での返還が想定された。

借金を積み重ねるとツケを将来に先送りしているというのは非常によくわかる。
だから、増税しようというのは一見正しい見方のようにも思える。
でも考えてみよう。
今の政府の借金は、過去20〜30年で大幅に増えたものである。
仮に将来にツケを残さないのであれば、その世代が返還すべき借金と言うことになる。
そもそも少子化が叫ばれている現在、今ある借金すら将来世代にはとてもではないが返しきれない金額ではないのだろうか。
ところが、ここ20〜30年間に社会の中心にいた人たちは、現在団塊の世代と呼ばれ高齢世代に突入を始める。
それ故に年金の不足が問題となり、支給時期を先送りしようという議論は多大な反対にあって、当面は凍結のようである。

さて、今の借金を作った世代は逃げ切ってしまうのだろうか?

まあ、私自身は現状の日本政府の借金は返還ではなく、適度なインフレによって徐々に吸収すべきだと考えているので、現状において早急な増税などは行うべきではないと考えているため、上記の議論は馬鹿らしいと思っているのだが。

本当に、将来の世代にツケを残したくないのであれば、年金を削ればいい。
高齢者の保険料を上げればよい。
財政のばらまきなどやめればよい。

ところが、そんな議論は行われているだろうか?
税と社会保障の一体改革で、団塊の世代にツケを払わせる議論など出ているであろうか?
まあ、出るはずもない。
今議論しようとしているのは、将来世代に如何に文句をつけられないようにツケを回すかのルール作りなのだ。
年金がこの先すぐに破綻してしまえば、団塊の世代は老後をまともに暮らせない。
だから、自分たちも少し受取額は減らすものの、少しでも長くその状況を維持するための方策を検討しているに過ぎない。

そう考えると、「将来にツケを残さないために」というスローガンが本当に空虚に聞こえてくる。
現実には将来世代のことを真剣に考えてなどいないではないか。
ここ20〜30年を高齢者が安定して生き延びるための方策を検討しているに過ぎないのである。

では、なぜインフレに持っていく議論がいつもかき消されてしまうのか?
もちろんその制御が難しいという面は確かにある。
しかし、現状の議論はおそらく10〜20年ほどのその場しのぎにしか過ぎない。
それは、高齢者にとってインフレは現状の引き延ばし論よりも厳しいものになるからであろう。

インフレが続けば、高齢者の持つ資産の内でも現金は年々目減りする。
仮に5%のインフレが10年続けば、資産は実質60%になってしまう。
収入のある現役世代は、給与も同じように増えれば多少のタイムラグはあるものの生活に困窮するわけではない。
しかし、年金や貯金に依存する高齢者はそうはいかない。
年金支給額が40%カットとなれば、、、、そりゃ厳しいだろう(実際には物価スライドでそうはならないが)。

まあ、現実にはいろいろな議論があることは知っている。
また、高齢者を無下に厳しい状況に追い込むのが良いと言い切るつもりもない。
しかし、現状は将来を語りながら実際には現役世代の逃げ切りを担保する制度を議論している状況は、どう考えても大きな矛盾ではないかと思うのだ。

本当に将来のことを考えるなら、、、、現状とは違う選択が為されるべきだと私は個人的に思う。

「美辞麗句は、曖昧だから許される。本音とは違う意図も覆い隠してくれるのだから。」