Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

欧州危機をうんざり感で無視するアメリカ

欧州の金融危機は、イタリアの10年もの国債が6.5%を超えるレベルまで上昇しており、5年もの国債まで6%を超え始めた。
ギリシャアイルランドポルトガルなどの例を見れば10年国債が6.5%を超え手から僅か半年ほどで大幅な国債金利上昇へ突っ走ってきた。
さらに言えば、スペインの10年国債も6%台におり、イタリアのみの問題ではない。
今や、フランスの国債金利も不気味な上昇を始めた。

リーマンショック直後に、欧州は金融機関に不良債権処理を進めるのではなく制度を変えて損失を先送りする方針を選択した。全く同じとは言わないが、今日本でも問題となっているオリンパスと変わらない構図がそこにはある。それを一私企業が行っているか、国家ぐるみで行っているかの違いである。
アメリカの金融機関も全ての損失を処理したわけではないものの、欧州のようにほぼ全ての先送りをしたわけではない。実際ここ数年、アメリカの地方銀行は毎年100以上も倒産している。すなわち、超大手だけは増資などで救済し、中小の金融機関は潰れるに任せていると言って良い。

ところが、欧州はほぼ全て救う側に回った。
ほぼ全てを救うと言うことはどう言うことか。金融機関の損失を国家が肩代わりすると言うことである。
もちろん、その肩代わりには議論もあろう。ただ、アイルランドの場合などは金融機関の倒産でイギリスやオランダの出資者が被る損失を国家が保証する話にまでなっている。単純に倒産させて、、、、という状況には至れない複雑な絡みがあると言えるだろう。

金融危機や不況により生み出される負債を全て国家が引き受け始めたからこそ、欧州各国の国債金利がジリジリと上昇を続け、ECBの必死な買い取りにも関わらず一向にそれは下がらない。
欧州の金融安定化基金は、ギリシャポルトガルなどを救済するには十分であるが、イタリア一国を見てもそれを救済するにも不足する。だから、今は中国に支援を要請し、続いて日本にもそれとなく打診をしている。ちなみに、中国はsienの代償として様々な国際機関のポストを要求し、それが故に支援は流れるのではないかと現時点では予測されている。だから、遠かれ近かれ再び日本ににじり寄ってくるだろう。

現状では、イタリア・スペインが本当に危機に至れば欧州だけでは救済などできるはずがない。
そして、引き延ばしはいろいろと可能だろうが、危機を無くすための根本的な方法など何もない。
だから、喧々がくがくの議論が一向にまとまらないのである。

ところが、アメリカはその欧州危機の危険性などどこ吹く風の状況にある。
確かに直近の景気指標はアメリカは悪くない。
良いわけではないが、世界の減速感から比べればかなりマシとも言える。
実際、日本から見ればドル安円高が延々続いている様に見えるが、世界の中ではドルは強含みでもある。
逆に言えばアメリカは輸出拡大のためにドル安を誘導している(表面的にそれを宣言しないが)が、それは成功していないとも言える。
じゃあ、アメリカ経済が順調かと問われればこれは順調ではないと言うべきであろう。
好調なのは、多国籍企業が世界で稼ぎ出しているに過ぎない。国内の失業率は超金融緩和にも関わらず未だ回復せず、自治体の破綻も小さなところから現実化し始めた。
失業者の増加には歯止めがかかった感じではあるが、現状では悪化が止まったというレベルであって回復と言える状況ではない。

ところが、NASDAQの株価は既にリーマンショック以前のレベルまで回復している。ダウ平均はそこまで回復していないが、それでも世界の株価と比べれば回復は著しい。
要するに、世界の危機と比べてアメリカだけは株価の面では随分とマシなのである。それはQE2の大いなる成果と言っても良いかもしれない。そして、ドルという基軸通貨を有していることのメリットでもあるだろう。これだけドルの流通量を増やせば通常はインフレに悩まされるところではあるが、現状過剰なドルは海外へ流出していきアメリカ以外のインフレを促進しているに過ぎない。すなわち、アメリカはインフレをそこまで大きな懸念とせずに済んでいる。
これは、おそらくユーロや日本との大きな違いだろう。

すなわち、アメリカはユーロ危機などを心配しながらも、心配にうんざりし始めると言える。
欧州が先送りをできている間は、心配ばかりしていても意味がない。。。と言ったところであろうか?
でも、危機が解決したわけではないのだが。。。
そして、欧州の株価もアメリカに引きずられるように下がりきらない。
危機が深まっているにも関わらず。

「じわじわと広がる危機は、正当に評価されにくい。」