Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

若年層失業率の増大が引き起こす懸念

少し前より再度世界中で若年層の失業率が大きく上昇している。
ギリシャでは失業率が過去最高の16.5%になったと報じられているが、15-24歳の失業率は42%と全体の2.5倍以上である。スペインにおいてもそれは45%近くであるし、若年層の定義に差はあるもののその他の諸国でも軒並み報じられている失業率の倍以上が若年層の失業率となっている(参考資料:http://jp.wsj.com/Economy/node_283740http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-23685120111018)。
ユーロ圏では平均でおよそ20%、日本はまだマシで10%程度、アメリカも20%近いとのデータもある。
韓国などでは4大卒の約半数が定職に就けていないという話もある(政府公表は約16%:http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/10/14/2011101401026.html)し、中国でもそれは高いという報告はあるものの統計情報が不正確なこともあって実態はよくわからない。
ただ、統計の取り方次第で失業率は変化するので、日本が失業率が低いとは必ずしも言い切れないのだが、欧州の現状などを見ているとまだ多少は増しなのかもしれないとも感じている。

ただ、景気が悪くなればまず若年層の雇用が失われていくのは、過去にもあった事実であり今回特有の傾向ではない。
すなわち、不景気になれば企業は雇用を減らして経費削減に勤しむ。欧米ではレイオフは日本より容易ではあるが、それでも首切りよりは採用抑制の方が容易であるためであろう。また若年層は実戦で使えるようになるまで企業内での教育が必要であるが、それすらを企業が惜しんでいるという結果でもある。若いうちからの資格取得などが望まれるというのは、こうした風潮を受けた結果だと言える。
そしてもう一つの原因として挙げられるのは、パラサイトシングルという言葉に代表されるように、仮に働けなくてもある程度の収入がある親に世話になれることもあって、一部の若年層がとにかく絶対働かなくてもよいと考えない傾向があることも想定される。要するに、気に入らない仕事をするくらいなら親の脛をかじっておくと言うことだ。

基本的には前者の企業側の都合が大きいと思うのだが、どちらにしても若年層の高い失業率は大きな社会問題を引き起こすマグマとなって溜まっていることは、少し前のイギリスにおける暴動を見ても明らかだろう。
世界中で、未来に向けた人間に対する投資が設備投資同様控えられているのである。

今でも、職業を選ばなければいくらでも仕事はあるとの話はどこでもよく聞く。
日本の場合、確かにその指摘が正しい部分もある。それは先ほど示した若年層の失業率が高い理由の後者による部分であろう。嫌な仕事はやりたくない(しなくてもなんとかなる)という面だ。
しかし、それもあくまで程度問題である。一時的には職業について低賃金ではあっても収入を得ることができたとして、そういう業界は俗に「ブラック」と呼称されたりもするが、ステップアップの可能性が低い使い捨てのように雇用者を扱う傾向の強い業種が多い。すなわち、経験を重ねたからと言って給与が増加しないであろうことを皆知っているのだ。だから、将来設計など成り立たないと考えれば易々とそうした職業には就きたくないという意見も無視するわけにはいかないだろう。

さらに世界のレベルまで若年失業率が増加すれば、、、すなわち20%以上のそれになれば、もはやアルバイトなどの不安定な地位しか得られないということになるのも不思議ではない。
先日FRBアメリカにおけるギャング人口が140万人に達したという懸念を表明していた。何のことはない。稼ぐ場所が無くなったため、非合法な方法によりそれを得ようという状況の増大である。
若者は、基本的には将来への夢を抱いている。夢も希望もないという話も多いのだが、それが愚痴で済むと言うことはある程度のレベルで我慢すれば何とかやっていけるという裏返しでもあって、最低(と考える)レベルすら得られないのとは異なる。
日本で、こうした問題がまだ顕在化していないのはまだ社会にあることの裏返しでもあって、ある種僥倖と言えるかもしれない。

日本でそれが起こるのはもう少し先かもしれないが、今後世界で夢が描けなくなる若者が増えれば増えるほど、おそらく様々な国の社会は不安定化する。
NYのデモのように一部の勝ち組が富を独占する社会と多くが認めれば、今後反対運動がさらに先鋭化する危険性もあるだろう。アラブの春も流れとしては同じだと思う。

年金も税金も大切かもしれないが、最も重要なのは若年雇用の確保ではないだろうか?

「私達は現在の資産を死ぬゆくものに費やすか、育つものに費やすか。二分する話ではないのだが、おそらく分配はバランスを欠いている。」