Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

資源権益と軍事力

円高メリットを生かそうと、海外の資源採掘権や企業買収の話が多く持ち上がっている。
確かに、円高はこれらを買収するには大変な追い風である。
1ドル120円だった時期から考えれば、2/3の費用で買収できるのだ(もっとも資源価格も上昇しているので、資源権益はそのままの安さではない)。企業に関しては、現状の経済危機から来る株安も手伝ってこちらは相当に安い。特殊技術などを有する優良企業を買収するには絶好の時期であろう。

しかし、それが上手く行くためには一つの条件がある。
それはあまりに当たり前の条件であるために議論の俎上にあげられることは少ない。
ただ、今のような経済の大きな変動時期においては考慮の必要があることである。
すなわち、世界経済の破綻が生じずに今後安定した景気状況に戻ると言うこと。

大規模な国家破綻などが生じればどうなるか。
おそらく世界各地で政権の転覆が生じる。
あるいは、多くの企業倒産が生じる。
この時、新しく生まれるであろう政権は過去からの権益をそのまますんなりと継続させるか?
想像するにこれはなかなか難しい。
アメリカや中国などは、自国が無事であればおそらく軍事力による睨みでそれを認めさせる。
しかし、日本の場合は建前上軍事力を有しない(ことになっている)し、海外の国家をそれで脅すなどはおそらくできまい。だとすれば、方法はいろいろとあるだろうが動かすことのできない資源権益などは奪い取られる可能性が低くはないのである。

もちろん、世界的な努力によって金融経済危機が収束して、現状の世界的な枠組みに変動がなければ商取引の継続性は担保されるであろう。だから、欧州でも破綻処理よりも現状維持を優先するのである。そして、日本も同様に現状の体制を維持しておきたいわけであって、助力を買って出るわけでもある。

かつての世界恐慌と同じような不況が世界中に巻き起これば、当然のことながら地域的な紛争も巻き起こるだろう。それが戦争に向かうと見る向きも少なくはないが、私は大規模な戦争突入という状態には至らないと思っている。と言うのも、かつては植民地支配により痛んだ経済を立て直すことができただろうが、今の時代にはそれは困難である。
だとすれば、武力的な活動はあくまで牽制として用い、様々な経済的に有利な取り決めなどを行うことが中心になっていくだろう。それは形を変えた戦争であって、今の時代でも言われる「経済戦争」のより露骨なものになるのだと思う。

混乱の時代が来るかどうかはわからない。現状の経済の枠組みが維持できるかどうかがもっとも大きな焦点であって、それがこないと考えるのであれば円高の今、各種の海外権益を手に入れることは大きなメリットとなるだろう。
しかし、それはあくまで投資なのであってリスクを背負っているのは事実である。その最大のリスクは今回の金融危機を容易な方法では乗り切れないのではないかという危険性である。

現状、ギリシャ危機に端を発したユーロ危機は問題の先送りには一時的に成功しているものの、解決策が何なのかは一向に明示されていない。この危機は、金融機関の危機を通じて世界中に伝播する。
それは、まず新興国からのリスクマネーの引き上げという形で、そして欧州の金融機関にお金を貸している日米の金融機関へと。
仮に大きな経済危機が生じても日米欧の枠組みに変化が生じるとは思わない。しかし、新興国は大きな社会的変化にさらされるような気がしている。

その程度を展望できるわけではないが、こうしたリスクに対処できるのはおそらく日本の軍事力になる。それは政治体制が変化すればかつての信用はリセットされてしまうためである。

その軍事力がない日本としては、いかにリスクの低い投資先を探すことができるかが問題であって、単純に円高だかえら有利な投資先を選択するというノリではいけないのだろうと思う。
だとすればタイミングが重要ではあるものの、欧米の優良企業の買収が意外といい投資先になるのかもしれない。

「信用は暴力によって壊される。信用を守らせると言うことはその選択ができないようにすることでもある。」