Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

さるかに合戦

韓国の物価上昇率が5%を上回り始めたという。
さらに統計に関係ない分野でも消費者物価の上昇が著しく、実勢というか体感の物価上昇率はもっと高いという噂は絶えない。その状況については中国も同じようなものである。
もちろん、そうなったのは当たり前のことで驚くには値しない。

韓国はウォン安政策という為替安競争をかなり前から仕掛けてきていた。
それは、日本に追いつけ追い越せと言う意味と、中国からの追い上げに対抗する意味があった。
ウォンが安ければ、韓国にとってどんなメリットがあるのか?
それは、安い価格で輸出できると言うことがある。
仮に1ドル1000ウォンだったものが、1ドル1500ウォンに変わったとする。これはウォン安・ドル高である。
同じ1ドルのものをアメリカに売っても、韓国は500ウォンも売り上げが上昇するのだ。

では通貨安は良いことづくしなのか?
そう甘くはない。
輸出に際しては、通貨安はメリットがある。しかし、その分輸入についてはデメリットがある。
だから、輸入と輸出が均衡していれば社会全体としては損得はない。

数年前、韓国製品が爆発的に世界で売れて、市場を独占する勢いがあった。
その時には、新聞などもこぞって韓国の戦略を素晴らしいと称えて、日本も見習うべきだとの記事を書いた。
もっとも、状況をよく知るものには失笑するような記事である。
単純に通貨安によってメリットを受けているのであって、品質や好みで選考されているわけではない。
もちろん、韓国製品の品質はかなり向上してきているのも嘘ではない。
ただ、日本製品が負けているのではない。
対等に戦う舞台すら与えてもらえなかったのである。

それは、短期決戦的な戦略としては意味がないとは言わない。
一時的に市場を席巻して他者を排除してしまえば、その後は独占的な利益を得ることが出来る。。。という前近代的な手法ではあるのだが。
しかし、市場席巻に時間がかかればかかるほど、韓国国内の体力は蝕まれていく。
これは、韓流という名で売り込んでいるコンテンツ産業も同じ構図である。
安い価格で他国に売り込み、一定以上の独占を果たした後収益を回収しようという戦略だ。

しかし、この戦略は上手く行かないと思っている。
韓国内市場であればともかく、他の国で自国の市場をいつまでも他国に席巻させている国など存在するはずもない。特に、そこで暴利をむさぼり始めればやがて様々な規制をかけて排除に動くであろう。
それをわからない様に密かに行ってきたのはかつての日本である。しかし、韓国は露骨すぎた。
韓国の輸出依存度は43.4%とOECD加盟国では世界最高である(2010年)。
http://www.wowkorea.jp/news/Korea/2010/0913/10074728.html
外国にものを売らなければ食べていけない体制が出来上がっている。
ところが、世界的な景気悪化が進んでいる。売りたくても買ってくれなくなり始めた。

そこに加えて、通貨安の弊害が既に自国内に出始めているのである。
インフレという劇薬だ。
通貨安は輸入品の価格を上げる。特に、食料品とエネルギーを自国で賄えない国はその影響が大きい。
そして、輸出が多いと言うことは激しい国際競争を繰り広げていることでもある。
輸出企業が利益を上げるためには、原料費を安くして人件費を下げる必要がある。
原料費は通貨が安ければ下げられないので、人件費を削るのが最も容易なコスト削減方法である。
結果的に、非正規雇用が山ほど増える。
大企業の一部の社員以外は、まともな収入を得ることすらが難しい状況だ。
また、それでも賄えなければ工場などの生産拠点は海外を目指す。
そして、職場そのものが消滅する。

こんな状況下で、食料品や燃料代が上昇すればどうなるか?
社会的な混乱を引き起こしかねないのである。

一方、日本は円高だ。
リーマンショック後の為替変動を見れば、円はドルに対して50%近く値上がりしている。実を言えばウォンは20〜30%値下がりしている。円とウォンで言えばウォンは半分近くまで下がっている。
損をせず半額セールが出来る国に、少々の企業努力で勝てるはずはない。
しかし、これはあくまで輸出企業に限った話である。

一方で、円高のメリットはあまり目立たないが多くの国民が享受している。
世界的には原油高だがその影響を円高のおかげで日本国民はあまり受けていない。
食料品も元々輸入に頼る日本である。日本では現状物価も上昇していない。
日本は、世界の乱高下する景気を上手く吸収してなるべく社会に大きな変動を与えないように運営しているとも言えるのだ(もちろん円高にもデメリットはあるが、国民にとっては直接的にはそれを感じにくい)。

韓国は、世界景気の上昇に上手くのって一気に調子を上げたが、世界景気の不調に従い大きく落ち込みかけた。それを為替安という荒技(一時的なドーピング)で乗りきろうとしている。

日本と韓国の関係は、童話の「さるかに合戦」に似ている。
あるいは「ありとキリギリス」でも良い。
調子の良いときに、そこにのって一気に儲けを広げた。
それが行きすぎて調子が悪くなり始めている。
さて、かにはさるを助けるべきであろうか?
ありはキリギリスを助けるべきであろうか?

win-win の関係とは、両者が共存できるすなわち相互補完的な場合に成立する考え方である。それは分野が異なる場合もあれば、地域的な棲み分けが異なる場合もある。その両者共が競合する場合にはwin-winの関係は成立しない。」