Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

沖縄独立論を少し考える

 にわかに沖縄独立論が一部で持ち上がっているようだ。確かに過去に遡れば沖縄は琉球王国(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%90%89%E7%90%83%E7%8E%8B%E5%9B%BDhttp://torohiko.ti-da.net/)である。統治という面で見れば独立した状況にあったが、現実には中国の朝貢国として扱われていた時期が長かったようである。ちなみに真偽のほどはわからないが、源為朝が現在の沖縄に逃れたのが始祖であるという説があり実際に為朝上陸の碑が建てられている。なお、先島諸島奄美諸島琉球王朝とは別系統の集団であり、どちらかと言えば琉球王国に支配されてきた地域という側面もある。
 さて、1609年の薩摩藩侵攻により琉球王国薩摩藩と清への両属という体制になりながらも、独自の統治体制を取り続けてきたが、1871年廃藩置県に際して日本側の圧力で清への朝貢は廃止され、1879年に沖縄県として正式に日本に組み入れられている。
 その際に、沖縄県設置に反対する琉球の士族たちはひそかに中国に渡り、王国復活をめざして清朝に救援を求めたようである。これを受け清朝は日本の琉球併合に抗議し、アメリカの調停により日本と清朝琉球王国を分割する案が出されたが、琉球側の意向を無視した分割案に対して中国内で活動する琉球人らは猛反発し、結局交渉は先送りされたとされる。
 戦後、アメリカの統治下に置かれたが1972年に日本復帰を果たしている。現在、米軍基地が沖縄に集中している一番の理由は、この長い統治があったことがあるだろう。

 さて、歴史的経緯は上記のとおりであるが、現状として沖縄は独立した国家として運営が可能かを考えてみよう。沖縄の人口は現在約142万人で、財政力指数(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%A1%E6%94%BF%E5%8A%9B%E6%8C%87%E6%95%B0)は0.28と全国平均(0.46)よりかなり低くワースト5に位置する(最悪は島根県の0.22)。面積は2,271平方キロメートルであるが、海洋面積を考えれば日本の排他的経済水域のおおよそ10%程度を沖縄県が占めている(http://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary03)。
 平均年収は333万円であり全国平均(469万円)と比較して非常に低い状況にあってこれは最下位に位置している(http://nensyu-labo.com/2nd_ken.htm)。こうしたこともあって、税制上の優遇措置を受けている(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%96%E7%B8%84%E7%9C%8C)。

ガソリン税(本土より1リットル当たり7円引き)や、沖縄自動車道の通行料金(本土より約4割引)などが軽減されている。
沖縄県発着の航空便に関しては、航空機燃料税が50%減免されていることもあり、県外の同一距離路線に比べて5000円程度安くなっている[49]ため、結果として観光客誘致にも寄与している。
○観光においては、観光戻税制度、のちの特定免税店制度が他県にはない特徴的な優遇税制である。
○酒税の軽減措置がある(→泡盛オリオンビール参照)。
○2002年(平成14年)4月に施行された沖縄振興特別措置法により、IT関連企業、金融関連企業の誘致を行っている。税制上の優遇(法人税の控除、特別土地保有税の非課税、事業所税課税標準の特例)と大地震等の災害の可能性の低さを理由に、いくつかの企業が特別地区への移動を行っている。

 沖縄の最大の問題は実質的には経済問題であり、失業率(5.0%:http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/lfs/lfs_index.html)の高さや給与の低さ(http://www.kaiho-ri.jp/wp-content/uploads/2014/05/kri-outlook032.pdf)が問題なのだと思う。調査によればニートの人口当たりの数も全国5位と非常に高いことがわかる。
 かつて芸能人になることが一攫千金への近道であったことから、数多くの芸能人が沖縄から生まれてきた(http://matome.naver.jp/odai/2135280829582636101)。現状がどうかはわからないが、CD売り上げの減少など若干道が狭まっている気配もあるかもしれない。
 さて、政府からは基地問題を理由に過去からずいぶん多くの経済振興資金が投入されてきた(http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_yosanzaisei20150114j-10-w350)。総額は40年で10兆円を超える。もちろん交付金は全国の自治体に配分されているが、一人あたりの金額で考えると沖縄は大きい(http://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/chosei/kikaku/documents/q8honkentotafukennozaiseiitennohikaku.pdf)。

 国庫資質金は一人当たり全国1位であるが、地方交付税が一人当たり全国16位であり、それらの合計では全国では6位であり、沖縄が突出している訳では無いという意見もある。
[Q&A]優遇は誤解 沖縄振興予算(http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=98339
 ただ、地方交付税(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouhu.html)は当該都道府県の収入不足分に対する補てんのためになされるものであり、一定の合理性に基づいて算定されているモノのため、これを含めた国からの財政支出を含めることは問題点を曖昧にしてしまう可能性があると私は思う。防災・安全対策などは面積の大きな都道府県の方がどうしても必要になるため、単純な人口規模だけでは言い表せない面があるためだ。
 さて、先ほども触れたように沖縄県の最大の弱点は経済的な自活ができていないことであり、これは沖縄に限らず日本全国の地方自治体が抱える大きな悩みである。偶然というつもりはないが、基地問題というトラブルの種を抱えているからそれがクローズアップされているが、それがなくなれば問題が解決されるかと言えばそうは思わない。
 政府も、安易な公共工事型の支出に頼ってきた部分が大きく、それが沖縄の振興を必ずしも後押しできていないところではあろう。ただ、この問題は沖縄だけの問題ではないことに注意が必要である。

 さて、では沖縄県と同じレベルの独立国家としてはどのような国があるだろうか。沖縄と同規模の経済を有する国家としてはウルグアイ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%82%A2%E3%82%A4)が相当するという情報があった(http://blog.livedoor.jp/meaningless88/archives/2575471.html)。
 ただし、上記記事が2011年に作成されているため為替の変動で現在は同じとは言えないだろうし、またウルグアイの面積は沖縄の約80倍で人口も約2.5倍に相当するからあくまでイメージ論での比較に過ぎない。
 平成24年度の沖縄県内総生産は3兆8,000億円程度(名目:http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/accounts/2012/acc_all.pdf)であるが、これを1ドル=120円と換算すると316億ドルとなる。これで比較すると、おおよそカメルーンラトビアパラグアイあたりと近いことがわかる(http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html)。ちなみにカメルーンの人口は約2200万人、ラトビアは約200万人、パラグアイが約630万人である。

 上記のように、独立国家としては十分やっていけるだけの経済規模は持っていることがわかる。ただし、独立国となった場合に国民生活が現在のレベルを保持できるかどうかは大いに疑問があるとも言える。特に日本政府からの補助金がなくなった場合には大きな経済的ダメージを受けることは容易に想像できる。
 仮に、経済振興を考えるのであれば日本政府以外のスポンサーを得ることは必須であろう。それが中国になるのかどうかはわからないが、それが沖縄県民の望む道筋であるかどうかはこの際脇に置いておこう。少なくとも、現状のまま独立することは生活レベルの激変を招くであろうことは想像に難くない。だからと言って、沖縄振興策を捨てろと言うつもりはそれ以上に考えていない。私は、むしろ沖縄振興策の中身を変えなければならないのではないかと思っている。そして、これは沖縄だけの問題ではないのである。

 さて、県内産業振興に最も責任を持たなければならないのは実は都道府県である。これは沖縄だけの問題ではないが、交付金にぶら下がりすぎて効果的な施策を打てていない一番の問題は、都道府県という自治体の運営能力の低さにあると考えるのが本来の筋ではないだろうか。
 もちろん財源移譲の問題があるのは承知している。ただ、自前財源を増やすように動いた場合にも、各地方自治体の運営能力は今以上に問われることになるが、本当にそれを望んでいる都道府県は多くはないのではないかと感じている(首長は威勢の良いことを言うが、こちらは政治家なのでパフォーマンスとしてわからなくはない)。
 逆に言えば、その能力が十分にあれば沖縄は独立国家としても十分やっていけるとも言える(安全保障面はこの際別にしておこう)。そして、今回の独立論争が経済的な成功を目指してのものであれば本末転倒なのだ。
 まあ、実際には感情論を焚きつけている一部の過激思想の持ち主(バックが誰かはひそかに想像して楽しむのみにする)であることは明白なので、これを取り立てて騒ぎ立てることにメリットはないと思うが、せっかくの機会であったので整理がてらにまとめてみた。