Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

ネットの目眩まし

 新聞やテレビという既存メディアに対して、ネットメディアの信用性が低いことは多くの人が既に認識している。ただネットの情報は玉石混交でであって、たまにあっと言わせるような質の言説に出会うことがある。もちろん、読んでもほとんど意味のない情報や虚言流布にあたるようなものは、私たちが認識する量のおそらく何十倍・何百倍で広がっているのは言うまでもない。
 いいとは限らないが安定しているのが既存メディアであり、そのことを持って既存メディアが優れているという論を幾度も見かけたが、それはおそらく既存メディアの緩やかな死に様を後押しすることであろう。既存メディアの信用は、メディアそのものではなく引用する書籍や識者(コメンテーターではない)の言説で補填されているからである。
 ネットはそこを荒らしているとも言えるが、最も重要なのは必ずしもメディアそのものを食っているのではなく、書籍や識者の存在を食っていると考えた方が腑に落ちる。本来慌てるべきは専門家であってもおかしくないが、個人個人としては自覚しがたいのであろうことにより反応は薄い。
 むしろ既存メディア側が一生懸命ネットを貶めようとするが、それはピント外れではないかと考える次第である。

 さて、一方で最近のネットメディアの隆盛を見ていると、その資金が一体どこから出ているのか不可解に感じられるものも少なくない。もちろん日本の既存メディア産業はバブル崩壊後より徐々に勢力を弱め、ネット広告やメディアがそれに取って代わりつつあるという大勢は私も十分承知しているつもりだ。
 しかし、撒き餌のように用いられてきたアフィリエイト(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%90%E5%8A%9F%E5%A0%B1%E9%85%AC%E5%9E%8B%E5%BA%83%E5%91%8A)というシステムも徐々に変質し、ユーチューバ―(https://ja.wikipedia.org/wiki/YouTuber)もいつまでその地位を保てるかは危うい感じもする。
 もちろん、トレンドの変遷に上手く載れれば泳ぎ続けることも不可能ではないだろうが、かつてのアルファブロガー(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%AC%E3%83%BC)がどこまでそれを維持し続けられるかという難しさは、結局のところ収益にきちんと結び付けられなければ続かないというれっきとした現実を指し示している。

 やまもといちろうBROGに紹介(http://kirik.tea-nifty.com/diary/2015/05/post-8acf.html)されていた書籍であるが「ウェブニュース一億総バカ時代(http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E4%B8%80%E5%84%84%E7%B7%8F%E3%83%90%E3%82%AB%E6%99%82%E4%BB%A3-%E5%8F%8C%E8%91%89%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E4%B8%89%E7%94%B0-%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%9E/dp/4575154601)」がある。私はまだこの書籍を読んでいないが、読後の感想がBROGOSに記されていた(http://blogos.com/article/113941/)。

 書いてある内容は、しっかり聞いて考えれば「当り前じゃないか」と答えてしまう内容ではあるが、それでも普段の生活においてつい流されてしまう類のものでもある。広告もそうだし、新聞やテレビも似たようなものであるが、ニュースという体を取っているだけに錯誤しやすい。
 PVを稼ぐことでバナーによる収入を得るという単純利益追求ケースもあろうが、逆に世論誘導を目的とした別の意図が隠されていても全く不思議ではない。私は陰謀論者ではないつもりだが、それでも報道やニュースを隠れ蓑にした策略ではないかと疑いを掛けたくもなる。
 個別ニュースサイトの問題と言うよりも、似たようなサイトを数多く作り出して同じような傾向の記事を数多く書くことで、あたかも信ぴょう性のある事柄のように見せかける方法を疑っている。メディアスクラムとまでは言わないが、いくつかのサイトで順番に同じ記事を転載して話を広げるのは朝日新聞の得意技でもある(朝日新聞東亜日報→ニューヨークタイムス等:順番が異なることもある)。ちなみに、日本事務所が全て同じビルにあることは既に多くの人が知っている。

 さて、こうした無料ニュースメディアが信用ならないことはちょっと考えれば判ることだが、私達はメディアリテラシーを高めないとイケナイ事は分かっているものの、常に緊張してメディアが報道する中身を検証し続けるというのも面倒だし、手間をかけることがそもそも困難である。
 頭を捻って考え続けるというのは人によってはかなり難しい。じゃあ、どうすれば良いかというと多くの記事を漫然と眺めるのが良いのではないかと私は思っている。できれば信用できる社会論評しているブログなどをいくつか読むのも良い。
 とりあえず、少数の意見を鵜呑みにしないというのが最も良いメディアリテラシーの方法だと思う。その上で、他人の意見にあまり左右されることなく自分が把握できる事実を検証して、何が正しいかを想像するのが理想的ではあろうがそこまで行かなくても構わない。
 無料のネットメディアは、基本的に商売をしている訳であることを意識して、なるべく多くの情報ソースに当たる。そうすれば、様々な意見を眼にする事ができるだろう。その上で自分が最も納得できる言説を参考に自分なりの意見を組み立てる。常にその判断が正しくなるとは言えないが、なるべく広い情報に触れて、少しでもいいので自分で判断する、と言うことを続けていると徐々にではあるがリテラシー能力は広がっていくだろう。

 ネットは玉石混淆の舞台であり、かつそこには罠(ダム板ではない)も少なくない。ただ、踊らせようとしているメディアの尻馬に乗るのは腹立たしいと考えるならば、少しだけ手間をかけてみると言うことでネットの目眩まし対策を取ることはできるだろう。