Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

情報戦

 私の浅い知識に寄りかかった狭い知見ではあるが、情報戦は不利な側が状況を覆すためであったり、もしくは本格的な侵攻をする前の準備として行われることが多いと感じている。情報戦とは相手側の混乱を引き起こし、一時的な麻痺(判断停止や行動抑制)を生じさせることを目的として行う。情報収集・分析は常に行われるものではあるが、それを情報に関する争いまで引き上げるには一定の必然性が必要だと考えている。
 もちろん、情報戦を仕掛けていることが露呈したからと言って掛けている側が必ずしも不利になるわけではない。ただ、情報戦を受ける側からすれば事実の判明により対処は容易になる。こうしたものは誰が行っているのかが朧気には判っても証拠がない方が効き目が大きい。ネタばらしと同様に、意味と行動が読まれると予測や対処がなされやすくなり、結果として対費用効果が大きく低下しかねない。

 一部のマスコミや知識人は認めないかも知れないが、中国や韓国の日本に対する大規模な情報戦が現在進行形なのは多くの人が感じていることではあろう。ただ、自覚のない情報戦を正面切って仕掛けている韓国はともかくとして、本来韓国を利用して密かに行うべき中国まで表舞台に立とうとしているのは非常に稚拙にも見える。
 元々、現在の中国は他国に緻密な謀略をかけられるような体制ではないと私は考えているが、内部の権力闘争の複雑さ故にあたかも深慮謀略が存在するかのように見えている。今回のクリミアでの騒動を必ずしも肯定的に見ているわけではない(まだ情報不足で判断できない)が、これまでの経緯についてはプーチンの選択した手法はかなりレベルが高いと感じている。もっとも、あくまでこの先の落としどころを上手く用意していればの話ではある。
 他方、中国の外交的な仕掛けはいつもストレートであると言えよう。ただ、その規模と一貫性が日本と比べて確立していることから愚直でも強さは持っており、それが曲解されれば練られた外交戦略を持っているように報道される。
 良く言われることではあるが、世界中で闊歩しているスパイはその情報のほとんどを公開情報(メディアや機関のリリース)から得ている。007のように秘密資料を手に入れるのは、むしろ企業などの産業スパイの方が多いのではないか。

 私見ではあるが、現状の(あるいは近代の)中国の外交は概ね国内向けの言葉や行動が海外に向かってそのまま発信されている(もちろんそれを良しと判断しての行動だろうが)。それをあたかも緻密な外交戦略を持っているように伝えられるが、私はそうは思わない。むしろ相当に行き当たりばったりのタイトロープを渡り続けているとさえ思っている。ただ、彼らは良くも悪くも容易に軌道修正しないから、別の意味で価値を高めている。
 喩えが正しいかどうかはわからないが、日本の政治においても同じような傾向は若干あって、国内向けの理屈が海外に向かっては良く理解できないものとして広まっているのは日本人も感じるところであろう。
 私たち日本人では当然と思うことが、他の文化ではきちんと理解できないというのは当たり前の話でもある。逆に言えば、よくわからないと言うことが実は大きなメリットになっていると考えても良い。最初にも書いたように、情報というのは相手に読まれると効果が著しく低下する(もちろん誤った理解をさせるという手もある)。一方で、迷うほどに効果が高まる。仮に読めなくとも歯牙にもかけなければやはり効果は低下する。

 世の中には深読みすることがあたかも高尚であるように考える人がいるが、それも時と場合によりにけりである。メディアなどの分析においても、これまで気づかなかった側面を露わにしたり、あるいは持ち得なかった情報を知るなどの驚きを得ることもあるが、一方で我田引水的な曲解に眉をひそめることも少なくない。これだけ深読みしていますよと言う識者の言葉は、ありがたがられることもあろうが私は神社のおみくじレベルではないかと思う。
 昔と比べて、ネットの発達した現代情報社会では情報戦のあり方もかなり変わってきている。都市伝説的な噂も賞味期限は短くなり、メディアの煽りも場合によれば反作用となる。現状で強いのは継続的な宣伝で、韓国や中国は日本に対してそれを仕掛けている。嘘も1000回言えば本当になるのごとく、壮大に吹っ掛けて0に近かった利益を大きくしようとしている。
 情報戦の基本は、仕掛けられていることに多くの人が気付くこと(迷惑だという認識では不足、単純な反発は損をすることもある)と、状況を正しく認識することが重要なのだ。