Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

中国内戦

 中国の現体制の足下が揺らぎ始めているのではないかと一部では囁かれているが、この流れは人道的見地から言えば様々な問題を秘めている。現状では中国の内政問題として世界中がおおっぴらには介入できないでいるが、チベット問題、ウイグル問題や内モンゴル問題など、様々な民族問題を中国が抱えていることは誰もが知っており、時折思い出したように声が上がる。こうした地域では漢民族の入植が行われ同一化政策が採られているが、多くの場合において漢民族優遇が露骨な形で行われている。独立運動の高まりは、独自文化封殺に加えてこうした差別的な状況に反発する部分も少なくないと思う。
 そうは言っても現状では、中国政府は各地で矛盾や紛争を抱えながらも善し悪しは別にして一定の治安維持を行っている状況にある。しかし、もしこれが崩れることを想像してみれば一体何が発生するのかは明白であろう。かつて東ヨーロッパでも見られたように、力による圧政はその箍が外れる時多くの暴力的行為を伴うものである。その残滓は未だに東ヨーロッパ社会の不安定さに垣間見える。

 仮に中国の現体制が崩壊したことを考えてみると、各地の軍閥や地方政府が地域覇権を獲得しようとするであろうし、あるいは圧政に苦しんできた地域でもこれまでの鬱憤を晴らすような暴力の嵐が起きるであろう事は容易に想像できる。私は以前より拡大と膨張を指向する現在の中国を、日本としては分断する方向で働きかけた方が良いという考えではあるが、日本のみの話ではないものの扱い方を間違えれば中国は内戦に突入する。
 いくつの地域に分断されるかについてもいろいろなシミュレーションがなされているが、戦国時代さながらの状況は武器の破壊度が全く違うレベルにあるだけに恐ろしい。もちろん日本もとばっちりを受ける可能性は非常に高い。あるいは消費地としての中国を生かすという日本のみならず世界が目指す姿としても、下手な内戦状態は望むべき状況ではない。おそらく、世界中の認識も如何に緩やかに動乱を抑えながら中国を解体分割していくかについて検討されているのではないかと思うのだが、その姿が目に見える形で現れることはない。
 世界が欲するのは、内部矛盾を世界に付け回すわがままな中国ではなく、単純に潤沢な購買力としての中国である。曲りなりにも統制の取れている現状を大きく崩すことは望むはずもないが、徐々に力を削ぎ落すことは誰もが考えることであろう。

 中国という国家の分割は、当然一定の内部抗争により引き起こされる。すなわち、巨大な一国を維持するよりも分割統治したほうが有利であるという状況が明らかにならなければならない。そのためには、現状の巨大な中国により権益を得ている現指導部の少なくとも一部を弱体化させる(あるいは失脚させる)ことは必須である。それには人民解放軍との関係が非常に大きなファクターとなるが、人民解放軍は元々地方軍閥としての性格も強い。中央が統制できている間は国家全体としての機能を担えるが、その司令状況が崩れれば外国との戦争でもない限り統一性が保てるとは考えにくい。
 経済的な崩壊は徐々に進行しているが、巨大な国家でかつ統制経済であるということから容易に崩れ落ちてしまう訳ではない。国家のGDPの数値にすら信頼性に疑問符が付くが、こうした数字そのものが明らに問題域に達するように仕向けるというよりは、現在の指導部や地域有力者たちがその可能性を強く意識することが最も重要である。
 ソ連が崩壊した時よりも急進的でなく、しかし着実に地域分割が進むためには中国の指導層自体がその準備を進めるようになってゆく必要がある。それでも様々な混乱が巻き起こるであろうが、見かけ上とは言えども大きな力を得つつあるの力を制御して、日本やアジア地域に安定を導くためには中国の膨張をなんらかの形で止めなければならない。中国の成長が平和裏に進むのであればそれも一つのありようだとは思うが、人民の数が多すぎるが故に周囲とのイザコザ無しに行えないのは現状が示すとおりである。

 しかし、社会の動きは容易に制御できるものではなく、ましてや政治体制の崩壊はある時一気に突き進む。私たちが為すべきことは、とりあえずあらゆる可能性考察し、誠意や好意などに期待しない冷徹な分析と判断が重要となるだろう。
 少なくとも、いくつかの新聞社が訴えるような感情論と配慮では実質的な何も為し得ないことは理解しておくべきだと思う。