Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

人口減少は悪か

日本が移民拒否を続ければ国は亡びる=シンガポール李光耀元首相(http://news.livedoor.com/article/detail/7526841/

 移民問題が焦点と言うよりは、日本人口減少問題がどのような結果を日本に与えるのかを検証する方が重要だと思う。日本の出生率(約1.4)と比べると、フランス(2.0程度)のように人口減少に歯止めをかけることに成功した国家もあるし、起源そのものが移民によっているアメリカ(2.1程度)のような先進国であっても出生率が一定値以上の国家が存在するのは事実である(http://memorva.jp/ranking/unfpa/who_2012_total_fertility_rate.php)。
 他方で、ドイツや韓国などは日本と変わらないかそれ以上に低い。人口減少に歯止めをかけるためには出生率(正確には「合計特殊出生率」)が2.08程度が必要だとされており、日本のそれは現状においてほど遠いことを示している。はっきり言えば、少々対策を施しても人口減少を根本的に抑え込むことはできないという状況である。

 さて、欧州では産業上の要請により移民政策がかつて採られ、一時的には成功したものの現在では文化的な摩擦によりデメリットの方が多い。日本が移民政策に大きく舵を切れないでいるのは、この欧州の経験が一定の役割を果たしているのだろうと思う。しかし、現実には移民ではないものの日本に住む中国人がかなりの勢いで増加しているのも事実であり、実感としても街中でよく聞こえてくる中国語がそれを示している。
 最近、一部で見られる特定の外国人排斥運動は卑下すべき行動だとは思うが、それでも何の対策も無しに外国人が増える状況が今後も続けば、こうした運動はいくら規制を強化しようとも収まらないだろうと思う。
 では、産業界が要請しているように思いきった移民政策を導入すべきなのか。私はその問題点の方が大きいのではないかと思う。基本的に産業界が望む移民政策は安価な労働力を日本国内に招こうという趣旨が強い。それは日本の将来像を俯瞰的に見たものでは無く、海外の安い賃金に対抗できる組織を国内に作ろうというものだと思う。限定的ではあるものの東南アジアなどから看護師などの導入が行われているが、これも現状では上手くいっているとは言えないようだ。
 当たり前のことではあるが、賃金を抑えるために移民を入れるという考え方は、短期的には機能してもおそらく長期的には大きな文化的な矛盾を引き起こす。その矛盾を解消できる仕組みを私達が持っているのであれば良いのだが、個人的な感想としては日本人はそれを有していないし、それを獲得しようとすれば長い年月がかかるだろう。
 低賃金の移民を入れると言うことは、国内に日本人との明確な格差を引き起こすと言うことである。文化の問題は経済問題によりより大きなものとなるのだ。

 そもそも論に戻るが、日本は人口が減少してはいけないのだろうか。普通に考えれば、大は小を兼ねるではないが規模の縮小は日本の世界的影響力を押し下げるように感じられなくはない。ただ、私達日本人が豊かさを感じるのは全体のパイの大きさよりは一人当たりの賃金であったり豊かさである。それを確保できるとすれば、人口減は必ずしも日本という国家にとって悪ではない。ドイツやフランスは日本よりも人口面で少ないが、世界的な発信力は日本より大きい。大きさが全てではない。大きさがものを言うのは、おそらく中国と如何に相対するかと言った防衛面でであろう。
 現在のデフレ不況は、その原因として積極財政が行われなかったなどの様々な理由があるだろうが、一部で言われているように人口減少による需要の相対的な低下も一因だと私も思う。しかし、それと同時に今の産業界は必ずしも人が多くなくてもやっていける体制が徐々にできているという事実もあるのではないかと考えている。IT化の進展は、一人当たりの生産性を大きく向上させた。向上のオートメーション化も同様だ。
 その結果として、私達は同じ生産性では必要になる雇用者の数が減少している。これは、人件費が安ければまた話は別だ。あくまで一定の人件費を考えた場合には、オートメーション化した方が安いという状況なのだ。だとすれば、日本国内ではそれをもっと進めることで少ない人員で現状と同じ生産力を維持できるとするならば、人口減少は必ずしも怖いものでは無いと考えられないのだろうか。
 ちょっと無理矢理感があるのは理解しているが、移民ありきの議論がどうしても腑に落ちない私としては、気概があればもう少し踏み込んで人口減少のメリットデメリットをもう一度考えてみたいと思う。