Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

鹿被害

 中山間地の人口が減少していくと共に、人の手が回らないために鹿や猪が我が物顔で農作物を食い荒らす被害が増えている。農家は、微弱電流を流した電気柵(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B0%97%E6%9F%B5)などで対抗策を採っているが、これも小規模な場合は費用面で問題があり大規模だと漏電防止のための草刈りの手間など万能な訳ではない。
 一部には、灰色狼を日本に入れよう(オオカミの再導入:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%9F%E3%81%AE%E5%86%8D%E5%B0%8E%E5%85%A5)という計画もあるが、まだまだクリアすべき問題点は少なくない。

 では、なぜ今鹿の被害が増えているかと言えば天敵がいないからであろう。その天敵には人間も含まれる。かつては、猟師という職業があり野生動物も一定量狩られていた。鹿や猪も当然その対象とされており、地域によっては地域の名産品としてその肉が売られていたし、多くの食卓を賑わせもしていた。
 しかし、今ではより簡単に安い肉が手に入ることから、こうした職業は徐々に廃れている。
猟師がいなくなる?(http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/eat/127
リンク先(エコナビ)の資料によれば、30年前の猟師の数が約45万人でその後減少し続け、2000年頃よりは約20万人前後とされている。しかし、猟師も高齢化が激しく2007年段階で50歳未満の猟師は3万人程度に過ぎない。このままの流れで行けば、猟師人口が激減するのは間違いないだろう。

 かつては狼が鹿などの天敵としての役割をしてきたが、それが絶滅して生じた穴を人口拡大期の人間が補っていた。その最前線が猟師であり、猟師は一部の効果に取引される動物を無秩序に乱獲するのではなく、自然のバランスを図る役割の一部として機能していた訳だ。
 同じような話は林業にもある。人工林が悪い訳ではなく、人工林はほどよく手入れがなされていれば、地域環境を維持するのに役立つこともある。何も自然林が全て良い訳ではない。自然林はその中で自己完結する仕組みであり、そこに人間が入り込む余地はほとんどない。しかし、自然と共に生きていく人間は自然を損なわない範囲で人間を含めた生態系を構築しなければならない。それこそが人工林のあり方でもある。
 猟師もまた人間が関与した自然の中で人間が追うべき役割でもあったのだ。ところが、その数が現在激減を始めている。以前にも自然が人を脅かし始める時代(http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20111106/1320508353)というエントリを書いたが、そこでは竹林などの無秩序な広がりについて触れた。同じことは、動物の攻撃(農産物を含めた)に人間が対応できなくなりつつあるのだ。
 これは、農作物被害だけに留まらず熊による襲撃なども増えてきていることから、経済問題に留まらず人命問題となってきている。しかし、そこでさえ猟友会の人間が不足するという事態になっているのである(http://www.asahi.com/shimbun/nie/kiji/kiji/20101025.html)。

 自然豊かな環境が望ましいのはその通りであるが、私達が最も望むのはその一員として人間が加わっていることである。多くの自然は放置されれば人間を排除しようと動く。限界集落の全てを維持すべきとは思わないが、その撤退と再配置についても早い内から考えていくことが必要であろう。
 ちなみに余談ではあるが、最近マンガで「山賊ダイアリーhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E8%B3%8A%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC_%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB%E7%8C%9F%E5%B8%AB%E5%A5%AE%E9%97%98%E8%A8%98)」が人気を博しているらしい。猟師の実像を知る上では面白いのではないかと思う。