Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

TVを見るか?

昨年も、TV業界を取り巻く話題には事欠かなかった。フジテレビのデモもあり、韓流の話題もあり、最後には家政婦のミタが驚異的な視聴率を生み出したそうである(ちなみに、私はマルモもミタも見ていない)。
基本的には、私の場合ライブのスポーツを見る以外にはTVを見ることがない。それは、時間がないと言うこともあるが、見たいものがないと言うこともある。かつては映画を見ることやニュースを見ることがTVを見るための動機付けとなっていたのだが、今ではニュースはネットで、映画は格安のDVDが手に入ればCMに中断されることなく見ることが出来る。

ニュースの場合も、社会問題や国際問題などにおけるTV局の解説には違和感が多きすぎて、馬鹿らしくて見る気になれない。現状のネット空間には、玉石混淆ではあるものの一部に非常に良質な言論を比較的容易に見つけることが出来る。だとすれば、TVに期待するのは速報性くらいしかない。それすら、一次情報としての応力は新聞社や通信社のネット情報の方が確実で且つ早い。そして、その情報を受けて様々なニュースの広がりがあるため、TV番組をわざわざ見る必然性が減少しているのだと思う。

とは言え。現状ではまだまだTVの社会的影響はかなり大きいことも事実である。凋落しつつあるとはいえども、存在を無視できることなどあり得ない。個人的にはNHKの一部の番組は見てみたいと思っているが、残念ながらあまり見る時間を確保できないでいる。もっとも家族はTVを見るので、我が家にTVが必要ないというわけではない。
最近のバラエティー番組がちらりと目に入る時、すごく気になるのは喋った言葉をそのままテロップで強調していることである。それは、番組の中で覚えておくべきはここですよ、笑うべきはここですよ、と非常に押しつけがましいものとして感じられる。ものの感じ取り方などは人によってそれぞれだし、くすりとも笑えないバラエティを見る時、笑い声の効果音とテロップにより無理矢理笑いという感情を押しつけられているような気がするのだ。

どこかのTV局の人が言ったように「嫌なら見なければよい」のはまさにその通りではあるが、実を言えば世の中の大部分の人はTVが良いから多くの選択肢の中からTVを見るという行為を選んでいるわけではなく、主体的に動かなくてもそれなりに情報や刺激が得られるから消極的な選択としてTVを見るという行為を行っていると思う。
もちろん、好きなドラマがあったり、好きな歌手が出演する番組があったりもするであろう。しかし、おそらくそれはTVを見ている時間のうちごくわずかのものであろう。およそ、ほとんどのTV番組は時間を潰すという目的のために消極的に選択されているに過ぎない。
あまり統計的なデータは見つけられなかったのだが、年代別の視聴率を見れば年齢が上がるほどTVの視聴率が高いことがわかる(データは40代までであるが、経験的には高齢者ほどTV視聴率が高い気がする)。
http://pvpmtfv.blogspot.com/2009/05/blog-post_4449.html

若い世代になるほど、TV以外の時間のつぶし方を多く持っている。だからこそ、年代で見れば高年齢層になるほどTVへの依存度が高まるのであろう。加えて、専業主婦と会社員を比較してもおそらく専業主婦の方が平均すればTVへの依存度が高いであろう。
人生は短く無駄に出来る時間など本来あまりないはずではあるが、そうは言えども世の中には強い目的意識を常に有して時間を惜しむ人は現実には少ない。そして、すべきことの合間の時間は潰すための時間と相成っている。そして外出していなければTVはやはり最も容易なツールなのである。
地上波デジタルの導入によって、これまでの一方向から双方向の情報のやりとりが可能になると、一時期かなり大きな進化のように騒がれていた。しかし、現実はどうであろうか?多少の情報ツールとしての役割は増しただろうし、クイズやアンケートなどは容易に出来るようになった。ただ、それ以上の発展は今のところあまり見えない。

なぜか?それは、変な話ではあるが一方的に押しつけられるものであったからこそ、TVは楽で良かったのだと思う。
逆に、双方向と言うことは情報にアクセスする手間が必要になる。その手間を惜しまない人もある程度いるだろうが、TVを利用する多くの人はそれさえも手間だと思う人が多いのではないだろうか。双方向性は、両者に積極的な意思がなければ成立しない。ところが多くの場合は、TVにそこまで積極的に関わりたい人は多くない。
結果的には機能としてのそれは発展するが、ニーズに合っているかと問われれば肯定しがたいのである。

さて、若い世代についてはTV離れが進んでいるとニュースでも言われている。当然のことであるが、TV以外に時間を潰すすべを持っているからである。だから良いというわけではないが、TVの存続にとってはあまり好ましい状況ではないだろう。最初にも触れたように、双方向性ならネットの方が高い。情報のスピードやレベルの高さもTVはネットに負ける。だとすれば、虚飾でも何でも用いて目的を持たない人を惹き付けるしかないわけだ。
TV番組の劣化が叫ばれて久しいが、ある意味当然の帰結なのだろう。もともと、TVを消極的に選択する人を惹き付けようと番組を作るのだから。
最初の方でも触れたバラエティ番組における笑い声の挿入やテロップなどは、番組を真剣に見ておらずぼんやりと眺めているに過ぎない人にも笑うべきポイントを教えるという意味では非常に親切な作り方であるとも言える。しかし、主体性を持って見るものからすれば邪魔な存在でしかないのもまた事実。

さて、極端な話ではあるがこの状況を突き詰めたならば、TVは情報ルールではなくリラクゼーションツールとして道を見いださなければならないように思えてくる。そうなった時に、多くの人はやはりTVを選択するのであろうか?

「TVの長所が動画を用いた知の伝導だとすれば、少なくともNHKは視聴率にこびなくて良いのだからそこに十分な力を注いでほしいものである。」