Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

新たな先進国と発展途上国の在り様

 経済植民地主義により、発展途上国は先進国から経済的に搾取される状況が第二次世界大戦後に続いていた。一部の国家は、発展途上国から先進国に近づこうとして、復活した日本を初めとして韓国や台湾、シンガポールなどがアジアとしては成長した。その後BRICsと呼称される新たな大国も成長の兆しを見せたが、今は中国を除いては比較的停滞している。

 

 一方で、王政や専制国家であった国々もアラブの春などで、一旦民主化に向かうかと見られたが、その後は各地で迷走している。発展途上国に民主主義が広がらないのは貧しいからであり、貧しい国家ほど強権を求める動きが多い。国民の不満を吸収し、あるいは弾圧するためにそれが必要なのだ。その際たるは中国であるが、アメリカなどからの干渉を撥ね退けないとそれは難しい。ドルという基軸通貨体制からの除外をほのめかされ、あるいは種々の経済制裁などにより疲弊させられるからである。

 日本は、自業自得な面もあるがバブル崩壊という欧米主導の経済的な制裁を受け、結果的にはアメリカ支配体制の下での繁栄を享受しようと姿勢を変えた。これは、現状の世界支配体制を継続する道を選んだといえる。すなわち、明言することは決してないが発展途上国を積極的には成長させない(利用し続ける)ということである。

 これは、ある意味で国家としては正しい選択である。自国民の平和と繁栄をどれだけ継続させられるかを追求すれば、現状日本が得ている利得や権益をどれだけ維持・拡大できるかを考えるのは国の役目であるからだ。もちろん、貧困国の支援や生活水準の拡大を全く否定しているわけではないが、日本を脅かす存在になること(特に不公正な手段や圧力により進めること)は許容しない。その典型が現状繰り広げられている韓国との葛藤に表れている。公正な競争においては、日本の国として企業として努力するしかないのだが、それ以外は許さないというのは日本だけの問題ではない。米中貿易戦争の本質もそこにある。

 

 アメリカも欧州もそして日本も決して認めることはないが、現状の秩序を如何に維持するかに腐心している。この体制を発展途上国が逆転するのは容易なことではない。日本やシンガポール、あるいは韓国のように国力を増強できる国家は限られている。なぜなら、新しいルールは常に先進国により作られていくのだから。それに対して、かなり強引な形ではあるが挑戦状をたたきつけているのが中国である。

 アメリカは中国の脅威を認定し、現在ではアメリカ中心の世界秩序に従うなら一定の力の行使を認めるというスタイルに変更されている。逆に言えば、アメリカに抵抗する限りにおいて制裁を加えるということである。現実には複雑に貿易が絡み合うため、単純なロジックで語ることは難しいが、俯瞰すればそんなところであろう。

 

 今回書きたいことは、現状のアメリカを中心とした世界秩序がどのように変化していくのかについてである。日本は当面アメリカ中心の体制が継続することにBETした。一方、韓国は中国が取って代わることにBETし、その選択から抜け出せない状況で右往左往している。

 これは繰り返し書いてきたことではあるが、中国という大国を維持しようとすれば、良いこととは思わないが現在の中国のような強権的な支配体制を構築しなければ難しいということがある。人々は豊かになるほどに、政治に対して多様な意見を持つようになる。貧しさが固定されていれば諦めによりその状態が常識となるが、豊かになるチャンスが多くの人々の前に現れると、それを得るための権力闘争が発生する。特に、発展途上国から抜け出そうとする時期にそれが発生し、日本のような特殊な国でなければ国を分断する権力闘争(内乱)に広がるケースは多い。日本でも戦後の安保闘争等混乱はあったものの、世界的な意味で言えばそれ小さかった。私が知る限りでは国王の権威が高かったタイなどもそれに近いかもしれない。日本の天皇制も、混乱を大きくしなかった要因の一つではないかと想像している。

 だが、国民を統合する象徴のない国では混乱が広がりやすい。アラブも春も、韓国での政治的分断もきっかけは異なるが似たようなものであり、それを抑えようとすれば強権にならざるを得ないのである。ただ、これは為政者側からの考え方であり、国民が幸せなのがそれであるとは限らない。中国の場合、一部の漢民族は経済的繁栄を享受でいているが、それは他方で弾圧されている多くの民族があってのことでもあるのだから。

 

 さて、米中戦争では中国の旗色が多少悪いことについては多くの人も報道等で気づいているだろう。だが、米中間ではそうであっても、世界中の国内的な混乱を抑えたい多くの国の為政者からすれば、中国の体制は一つのロールモデルとして傾注に値するものとなっている。国民が成熟し、安定した政治と平和的な経済発展ができる国はそれほど多くない。多くの国民が経済的な繁栄を実感できるという基盤があって異なり立つためである。

 そこに至るまでに、本当に多くの衝突と混乱を経験しなければいけない訳であり、その混乱自体は国民に痛みと傷を与える。さらに言えば、アメリカをはじめとする日本を含む先進諸国は発展途上国の大きな成長を、心底からは望んでいない。世界中の人たちが日本人やアメリカ人と同等の生活をするとすれば、食糧やエネルギーは完全に不足してしまうからである。

 もちろん、その点に関する技術革新は昔から継続的に続けられており、世界の貧困者数は大きく減少している。多くの大人たちが考えるよりもずっと。ただ、それでもその成長には間違いなく限界がある。

 

 結果として、発展途上国は今後も強権的な政権が力を持つ可能性が高く、同時に富の配分を巡る途上国と先進国との間の諍いは増していく。米中貿易戦争に明確な終わりはない。そして、日本は自己の権益を守る側に立っており、それでも仲良くしようという偽善的な援助には熱心である。「できない善よりやる偽善」の概念は正しく、日本の進んでいる方向性は間違ってはいないと思うが、できる配慮に限界があることを示す必要は今後増大していくだろう。韓国との衝突は、そのためのパイロットケースとみることができる。

 中国は今後も下剋上を狙い続けるだろうし、アメリカの支配体制も安泰ではない。生産力と軍事力で世界派遣を築き、一時期陰りが見えたが今は経済力とソフト(金融・ITやサービス)により再度復活している。ただ、その発展もそろそろ限界が見えており、この先にアメリカの支配体制が盤石である保証はない。アメリカにBETした日本ではあるが、政府はそれもあり中国との決定的な乖離を避けようとしているようだが、個人的には今のままの中国にBETすることは避けたいところである。

 

 世界に派遣を広げる手段はいくつかある。一つは経済や金融、その中心としての通貨であり、もう一つは軍事力である。さらには派生的な力として技術力、文化や生活スタイルも存在する。前者は短期的に浸透し、あるいは発揮できるが、後者は世界に広がるには時間がかかる。できれば、日本という国が再び多くの発展途上国ロールモデルとして目指すべき指標になってほしいと思う。それこそが、最も世界平和に資することができると思う思うからである。