Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国は止まれない

 今月頭から始まった日韓貿易に関する問題は、現在状況が不利だと感じる韓国側が必死にアメリカを巻き込もうとする展開(要人次々...アメリカ詣で 韓国「泣きつき外交」展開 - FNN.jpプライムオンライン)になっている。ただし、それが容易に功を奏すると考える人は少ないだろう(【コラム】米専門家の間では「今回の韓日対立は韓国が始めた」との見方が多数派-Chosun online 朝鮮日報)。一部の日本人が、今回の問題でWTOに係った場合日本が不利などと言う議論を展開している(日本政府は韓国の輸出規制を再考すべきだ | 外交・国際政治 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)が、私見で申し訳ないがさすがに結論ありきで無理矢理導いた意見だろうと感じている。

 もちろん、前回の海産物輸入制限でWTOが下した結果が想定外なことは事実だし、絶対と言えるものは何もないが、安全保障問題の重要度を過度に低く評価した意見であろう。

 

 さて、タイトルに書いた「韓国は止まれない」について説明しよう。以前から何度か触れているが、韓国の政治は基本的に全て国内対策である。アメリカに妥協する場合にも、そう見せないように虚飾している。日本との協議でも、実際の協議内容とは異なること(もちろん若干ではあるが)を韓国内で発表することなどごく普通にされている。

 これらは、支持者に対するあるいは上司に対するパフォーマンスであるからだ。そうした支持者(指示者)が気に入らない状況に陥れば、容易に首を切られる(反旗を翻される)状況が起こるという恐怖感により自縄自縛になっている。アメリカや中国からの強制力に関しては、国民も半分やむを得ないと考えている面もあるが、だからこそ日本に対してはその反動が全て集中する。いや、そこに全てを集中させるように長年をかけて世論誘導システム(教育・報道など)が組み上げられた。

 彼らの行動はほぼ、自分の利益を短期に最大化させる行動で説明できる。もちろん、その行動が私たちから見れば有り得ないような程度の低いものであっても。

 

 韓国の報道(あるいは政府発表)を見るとき、私は常にその問いかける先は自国民(韓国民)であり、特に自らの支持者であると理解している。だから、彼らの言いたいことは、自分には責任がないことを嘘をついてでも説明するのだ。一方で権力者は、その力を使って出来る限り自分に有利な体制を構築しようとする。易姓革命易姓革命 - Wikipedia)と呼ばれる権力更新システムは、日本と異なり苛烈である。全ての大統領が退任後に不幸な目(自殺や逮捕)に追い込まれているのは多くの人たちも知っているだろう。

 要するに、ある意味相手国のことは大して見ていない。もちろん韓国人の中にもバランス感覚に長けた人は少なからずいる。だが、多くの場合そういう人は韓国社会を勝ち抜けない。そういう社会が既に組み上げられている。そこが日本人と明らかに文化的背景が異なるポイントだろうと理解している。

 

 彼らは、自らの目的のためには手段としての嘘や無法は許されると考えている。目的と言うよりは彼らなりの正義や大義のためにはと言った方が良いだろう。日本のメディアはほとんど突っ込まないが、日韓で生じる数多くの葛藤において彼らの主張はコロコロと変わる。主張の首尾一貫性の無さを日本人はおかしいと感じるが、彼らからすれば勝つという大義の下での手段の正当性にはそれほど配慮をしない。簡単に言えば、「勝てば官軍」なのだ。

 逆に言えば、一つの目標を決めた場合には国民を上げてそれに突撃できる強さを持っているとも言える。産業をその時点で最も有利なジャンルに特化させ、大きく成長させていくスタイルには日本も煮え湯を飲まされてきた。ソフトバンクスタイルとも言えるような方法は、リーダーが有能で将来を的確に見通せれば成功に至ることもできよう。

 

 だが、政治的なそれは多くの支持がなければならない。そして文政権のそれはろうそくデモから来る支持に依っている。北朝鮮の影響がどの程度あるのかはわからないが、そうした影響下で醸成されてきた親睦反日という世論。彼の政策はそれを忠実に推し進めてきたものである。極端に言えば、彼の政治的アイデンティティはそこにしかない。だからこそ、彼は決して引くことができない。経済的な損失を受けるとしても、一時的な妥協の雰囲気を見せたとしても、決してその方向性を変えることはできない。

 

 文政権が終了すれば、日韓関係が元に戻るという意見もある。だが、その前の朴政権でもレベルは違うものの反日的な状況は変わった訳じゃない。多少話ができる、多少は理性的な取引が可能であるという程度でしかない。それは、韓国が長年かけて作り上げてきた、そしてもはやコントロールできなくなった国民の雰囲気である。

 速度を上げ過ぎた車は急には曲がれない。そして、長年かけて作り上げた意識も急には変えられない。彼らは、少なくとも日本に対しては妥協できない空気を作り上げてしまっている。そのことを感じ取れない日本メディアは本当に多い。こうした空気は打算を越えて振る舞い、決して合理的ではない判断を導くものなのだ。

 

 「ほんの少し謝れば良いではないか」と思う人は少なくないだろう。それだけで日本人の心証は大きく軟化するはずである。だが、それは彼らからすれば決してできないことになってしまった。今後も、彼らは日本に徹底的に抗戦してくるはずだ。それが韓国経済に決定的なダメージを与えると分かっていても。あるいは、文政権が何らかの理由で打倒されることがあるかもしれない。だが例え一時的には軟化しても、結局同じような対立構造が持ち上がってくるだろう。

 韓国人の多くは「昼間反日で夜は親日」という意見もある。実際、多くの韓国人が日本に旅行に来て、多くの日本製品を使って暮らしている。若者たちは日本にシンパシーを抱く人も少なくない(韓国の若者に広がる「日流」ブーム | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス)と聞く。だが、そうした人たちが声を上げられない空気を彼ら自身が作り上げている。儒教的な考えによる「年長者の意見は絶対」という社会的な雰囲気が変わり、若者が声を上げられない空気を打ち破ることが出来ない限り、彼らは全ての責任を日本に押し付けるような態度を改めることはできないだろう。なぜなら彼らの考えでは、韓国が日本の兄なのだから。

 

(追記7/15)

 彼らは、どこかで日本が妥協するのを待っている。ひょっとするとそれは、韓国経済が大きなダメージを受けた後ですら。そして、日本が折れたと勝利を味わい、その後に日本の不当性を追求し始める。私からすれば「そんな精神的勝利にどれだけの意味があるのだ」と言いが、おそらくどんな些細な勝利であっても、時には勝利とは言えないような内容であっても、それゆえに世界的な信用を落としたとしても、現時点での彼らはそれを希求するだろう。だからこそ、韓国は止まれないのだ。