Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

朝日新聞とサムスン

 少し前より朝日新聞出版がdot.(ドット)というサイトを立ち上げたのか、良く見かけるようになった(https://dot.asahi.com/)。いつから始まったのかはよく知らないが、数か月ほど前より良く目にするようになった気がしている。アドレスには「asahi」の文字があるが、サイト名称からは直ぐに認識できない(https://ja.wikipedia.org/wiki/Dot._(%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88))
 ちなみに、運営は朝日新聞出版ではあるがそれ以外のニュースソースも扱っているようだ。

 さて、かつては「asahi:朝日」はブランドであった時代が永らくあった。朝日新聞記者は肩で風を切っていたし、年収も非常に高かったはずだ。今でも資料を漁ればいくらでも出てくるであろう。面白いのは、その大切にしていた「asahi」の部分を控えめにしたというか。むしろ隠し始めたことである。
 彼ら自身が状況の不利を認めたということにつながると思うからだ。似たようなケースが少し前にもあった。最近、ギャラクシーノートの爆発問題が大問題に発展しつつあるサムスンである。世界で大きなシェアを有していたサムスンではあるが、日本でのシェアをなかなか拡大できずにいた。そこで、スマホ本体から「SAMSUNG」のロゴを消してしまったという件である(http://news.livedoor.com/article/detail/11920974/)。ちなみに、ロゴを消したのは昨年からであり、今回が初めてではない。S6では効果が出なかったがS7では効果が出た様なニュースも見かけた。もっとも、それは爆発問題が生じる前の話ではあるが。
 サムスンが日本市場のためにロゴを消したと認めた訳ではない。だが、大市場である日本での売り上げシェア獲得は決して小さなものではない。そのために必要な措置を講じるというのは企業活動としては考えられる対策である。だが、世界一になったと自負する企業が自らのロゴを消すというのは半端なことではあるまい。

 「asahi」にしても「サムスン」にしてもそこに至るには大きな葛藤があったのではないかと思う。自らが誇りに思っている名前を前面に出さないという行為。それは、自らが不利な状況にあるということを認めなければ行えないことだ。業界トップが自らの不利を肯定する。自負心が強ければ強いほど難しい。
 ブランドイメージが毀損されるということ。本来は、企業は信頼を積み重ねてそれをブランドイメージとして築き上げていく。逆に言えば、企業名を隠すということは築き上げてきた信頼が失墜したと、暗に認めているということに繋がるのだから。
 実際に、まだゴシップレベルではあるが両者とも経営的な不調の噂もどんどんと高まりつつある(http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161015/dms1610151530009-n1.htm)。

 しかし、別の味方からすれば言論や品質で勝負すべき新聞社や企業が、自らの信用力を信じられなくなる。これは不味いことなのかもしれないとも思う。一部のゴシップサイトなどは次々と新しい名称のニュースサイトを立ち上げ、元のブランドに付いた負のイメージを誤魔化しているような事例も見かけるが、それと似た感想を抱きたくなってしまう。それでは、益々ブランドイメージが落ちて行くことになりかねない。「一から再び信用を築いていくためあえて中身で勝負する」といった説明もできなくはないが、それ以上に不利な状況を誤魔化すための小手先の手段と取れなくもない。
 どちらにしても一度落ちた信用は容易に戻らない。小手先であろうが、開き直りであろうが、関連が判り辛いところで進める禊は効果が薄いものである。仮に志は高くとも、いつの間にか結果的に売れればよいという小手先のループにはまり込む危険性は小さくないのだ。

 さて、両者ともこの苦境を乗り越えられるのであろうか。