Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

リベラルの衰退はマメさ不足が理由ではない

「ネット上の争いでは、リベラルは99%負ける」 津田大介さんが訴える政治運動の姿とは(http://www.huffingtonpost.jp/2016/10/07/daisuke-tsuda-interview_n_12383414.html

 上記の様なニュース記事があった。私自身としては安倍政権ですら比較的リベラルだと思っているので、津田氏が定義するリベラルはむしろ左派と呼んでも良いのではないかと思ってはいるが、ここで定義については深く追及はしない。同様の問題意識はついてこれまでも幾度か触れてきた(http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20130620/1371654216http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20121010/1349809835http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20140218/1392651211)

 さて、リベラル勢力の凋落について鳥越俊太郎氏の認識はかなりお粗末だと思うものの、津田氏は比較的冷静に把握しているように見受ける。(1)マスコミにより一定の影響力が確保できていること、(2)近年のそれ(SEALDsなども含めて)は刹那的で地道な活動を得意としていないこと、などは大きな一面であると思う。
 だが私が考える最も大きな側面は、リベラルが理性よりも感情を前面に押し出す活動をしていることだと思っている。それについて「冷静な言葉でファクトを出し・・・」が必要と表現されているが、近年のリベラル勢力に感情を抜きに冷静に人を説得できる言論をあまり見かけない。

 現実主義(リアリズム)がベストと言うつもりはないが、論理的背景が高度成長期からあまり変化していないのではないかとすら思うのだ。それはメディアの応援があるからこそ、努力を怠ってきたという結果であるのだと思う。今でも右派の論客がメディアに登場するのはごく一部の番組に限られる(TVタックルや何でも言って委員会等)。そして、メディアから受ける不遇さすらも跳ね返して社会に浸透している言論は、時に行き過ぎを感じられることもあるが、それなりの説得力を持っており多くの国民の琴線に響いているからこそ社会の趨勢を占めているのである。

 原発運動や反安保運動の全てが間違っているとは思わないが、一部の人やメディアを容易に動かし得る感情の利用と言うスタイルの殻を破らない限り、現状の停滞を抜け出すことは出来ないだろう。確かに何かの事件や事故があった時、一時的に活動は盛り上がりを見せる。
 だが、それは感情と言うあやふやなものを燃料にして燃え上がる炎と変わらない。持続性や発展性に関しては、知性に訴えかける論理が必ず必要となる。リベラル側からすれば、確固とした理論を持っていると主張するであろうが、先ほども触れたとおりその理論はおそらく今の時代性とずれている。古いのだ。ネットの隆盛により、多くの国民は不完全ながらも自分で考える力を増進させている。それは大きなものではないかもしれないが、少なくともリベラルを支援するメディアを不審に思えるほどには広がっている。

 津田氏が言うように、地道にマメに活動と発信を続けることで多少の改善を見せるかもしれないだろう。だが、他方でこれまで集まっていた人たちが離れて行くかもしれない。地道な活動は、あまり感情を利用できないからである。
 感情を起因とする活動を長く保ち続けることは難しい。と言うのも、感情はいつか薄れて行く。本来それを時間的に補強するのは論理だが、その論理が私には時代からかい離した古いものに感じられている。

 さて、私に認識がおかしいという可能性も十分あると思うが、リベラルは感情の利用という甘い罠から脱することができるのだろうか。その道はかなり険しいものに思えるが、どうだろう。