Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

異文化を見る目

 私は移民政策には否定的な感想を抱いている。確かに、生産年齢人口の大きな減少が問題なのは事実だが、移民には正負両面の影響があり、しかもそれが非対称だと思っているからである。正の面は、もちろん労働力の問題であるが、日本人が期待するほど単純労働を移民たちが律儀に受け持ってくれるとは限らない。日本にやって来る一番の理由はお金である。稼ぎを目的とする人たちにとって、建前上平等であるはずの就労が実は区別されているということを看過し続けられるだろうか。
 欧州を見ても、一面において移民が低賃金労働につくことにより社会が回るという面もあろうが、最近ではテロなどの虞から規制が再び厳しくなり始めている。私が最も難しいと考えているのは、異文化を見る目である。何も仲間外れにしたり、先入観から来るヘイトスピーチなどを取り上げようというものではない。それまでの生活習慣の違いや考え方認識の違いからくる微妙なずれを、日本社会が容易に乗り越えられるとは思わないことがある。

 差別とかいうレベルではなく、日常の小さな考え方や捉え方の違いが、お互いに近づくほどに大きな問題となっていく。それを回避するには二つ。アメリカのように自己防衛をするか、徹底的に当て異文化をお互いに知り合う事。前者は日本人の考え方として取り入れ難いだろう。後者は個人レベルでは可能だが、社会全体として考えると非常に長い時間がかかる。個人的感想で申し訳ないが、50〜100年レベルが必要だと思っている。
 だから仮に移民という選択肢を取るにしても、相当に長い調整機関を必要とすると思っている。現状の議論はとてもではないが、そこまでの余裕を見ているようには思えない。かつて、「人買い」との呼称を受けるとしても、移民は小さな子供たちを養子として受け入れ、日本人として育てるところから始める方が良いのではないかと書いた(婚活と少子化対策 http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20110805/1312481417)

 さて、実は今回の本題は移民にある訳ではない。最近、中国メディアの日本に対する記事がかなり変わってきたことに気づいている人もいると思う。一時期、日本国内で「日本素晴らしい」といった内容の記事が増えて、それを批判する識者もいたように思う。だが、今回は中国メディアが静かにそれに近いことを始めている(http://news.searchina.net/id/1619958?page=1http://news.searchina.net/id/1619966?page=1http://news.searchina.net/id/1620062?page=1)。ここで挙げたもの以外にもいくらでも見付けられるだろう。正直言って気持ち悪いほどの豹変に見える。
 中国では、政府批判を抑えるために日本批判を放任(あるいは助長)してきたという歴史がある。今でも荒唐無稽な抗日戦争のドラマもある(あまり評判は良くないが)ようだし、石垣沖での漁船船長拘束では大きな反日運動が政府の誘導により行われた(それを示す証言は数多いのでここでは省く)。

 韓国の場合には、自分たち正当性を守るために政治家たちとメディアは日本叩きに奔走している。ここにきて政治サイドが融和を図り始めても、メディア側はそれに反発し続けている。あたかもチキンレースのような感じである。
 だが、中国の場合には言論統制が厳しく、基本的にメディアは政府の指揮下にある。すなわち、中国の報道は中国政府の方針が現れてると考える方が素直である。その理由は一体何なのか。専門家でもない私には正確なところなどわからないが、日本人の反中感情の高まりを懸念してのものではないかと思う節は多い。
 経済的な苦境を理由として無い訳ではないが、それが日本人を称賛する方向性に出るとは思いにくい。もちろん、言論の自由化が広がったと考えるほどお花畑でもない。

 中国でも韓国でも、基本的には反日は日本人に対するものではなく、日本政府(さらには過去の日本)だという建前がある。それ以外は建前上フレンドリーでありたいという気持ちがあるのだと思っている。この場合のフレンドリーは、自分たちが良く見られたいという意味である。
 だから、中国政府側からすれば日本人を叩いているのではなく、右翼的な日本政府を叩いているという強い思い込みがあると見ている。しかし、日本人側からすれば中国の行動は非常に危険なものに見えており、それ故に警戒心を高めているのは間違いない。それが安倍政権を成立させた原動力でもある。
 私自身の考えは中国には深い戦略などあまりなく、国内勢力同士の抗争がそのまま対外戦略に出てきているのだと思っているが、そんなことは日本側から配慮すべき問題ではないのは当然だ。韓国は露骨に国内問題への配慮を日本側に求めてくるが、さすがに何度も煮え湯を飲まされてきた日本側としてはそうそう容易には譲歩しないだろう。

 そして、警戒心を高めた日本人たちは反中感情反韓感情を高めてしまい、その状況に慌てているというのが現状だと見る。中国も建前上は強気に出るが(弱気を見せると政権基盤を大きく損なうため)、事を荒立てたい訳ではない。万が一起こるとすれば、暴発は政権首脳ではなくそれ以外から生じうるだろう。ただ、一旦始まってしまえば政権側がコントロールできなくなる危険性はそこそこにあると見ている。
 かつては中国や韓国の反日感情の方が、日本の反中感情反韓感情よりも高いのが普通だったが、今ではそれが逆転しているようなケースも見受けられる(http://www.sankei.com/politics/news/160923/plt1609230034-n1.html)。問題は、中国政府はそれをコントロールできると考えていることであろう。先に触れたメディアの情報操作は、まさにコントロールできると考えているからこその所以だと思う。

 だが、中国の文化と日本の文化は異なる。日本人の場合、基本的には非常にフレンドリーだが、一度植えつけられた不信感は容易に解消しない。中国のように政権の都合により容易に改善することがないのだ。さて、その点を中国政府は正しく理解出来るであろうか。
 お互いに自分の価値観で相手を見て評価する。しかし、おそらく見ているモノや感じていることは違う。異文化が深く交わるほどに、その問題をどのように解決できるのだろうかと考えざるを得ない。