Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

まずはEU崩壊より独立運動激化

 イギリスが国民投票によりEU離脱を決めた(http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisuke-karakama-idJPKCN0ZA1JA)。ただ、イギリスはもともとユーロに参加していた訳ではないので離脱が比較定期容易であったというのは間違いないだろう。一部では離脱の連鎖が囁かれているが、私はそう易々と離脱が進むとは思わない。もちろん、フランスやイタリアで離脱派が勢いを増すのは間違いない。国民投票を仕掛ける向きもあるだろう。
 だが、個人的に関心があるのは今回の動きが一部独立運動を刺激する方である。と言うのも、離脱反対派の多かったスコットランドが英国連邦からの独立を示唆している(http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/06/post-5389.php)。前回の投票では辛うじて独立反対が勝利したが、EU離脱となれば次の結果はかなり怪しい。まだ明確ではないが北アイルランドの問題も見過ごせない。
 また、以前より独立運動が続いているスペインのカタルーニャ地方も、スコットランドの動きに大いに勇気づけられるだろう(http://jp.reuters.com/article/britain-eu-catalonia-idJPL4N19G620?il=0)。

 私は今回のBrexitがもたらすのは短期的に(数年の間)はイギリス経済の疲弊であるが、長期的にはEUの信用の低下であると考えている。離脱後のイギリスの困難さは言うまでもない。EUは内部結束を固めるために、不満を持つ国々に甘く接しなければならないし、一方で離脱したイギリスには厳しく接しなければ体面を保てない。
 だから、イギリスに不利だとする報道や分析が非常に多い。もし論その面はあると思うが、私は長期的にはイギリスの信用低下や苦境よりもEU全体の方が厳しい状況に至るのではないかと思う。マイナスの度合いを比べる空しさはあるが、結果的にイギリスはEUよりマシという状況になるのではないかと考えている。

 一方で、EU結成の主体的な役割を担ってきたフランスは非常に苦しい立場に追いやられる。当面は、EUの結束のために不満を持つ構成国をなだめる側に回らなければならない。ドイツもかなり立場を変えざるを得なくなると思うが、厳しいドイツと優しいフランスと言うイメージは今後もっと強まるのではないかと思う。
 そして混乱の成果としてユーロ安を得る。アメリカも利上げが難しくなったため、日銀が緩和しても円高は当面続くだろう。日本政府はそれを更なる緩和のチャンスととらえることも可能だと思う。また、ユーロ安から広がるドル安が新興国の輸出を今以上に追い込み、一部では苦境が生まれるかもしれない。リーマンショックなどと異なり急激な変動ではないが、確実に情勢が変わっていく。株価も、急激な落ち込みはなくとも低下傾向が始まるだろう。金融緩和が今後も続くので急激で極端な落ち込みはないと思うが、それでも今後の上昇は期待しにくい。

 少し長いスパンで見ると、次の興味は中国経済の動向とドイツのEU離脱の動きが生まれるかだと考えている。私は以前よりEUの崩壊というか、EUが弱者連合として為替を低下させて成功する動きに至ると思っていたので、ドイツが離脱して初めて成功するEUができるのではないかと考えていた。ただ、ドイツにとっては現在のEUは比較的居心地の良い場所であったため、その動きが明確になることはなかった。
 今後は、徐々にではあるがEUがドイツにとって居心地の悪い場所に変化していくであろうと考えている。ドイツ国民がいつそのような判断をするかはわからないが(しないかもしれない)、フランスの離脱よりはドイツの離脱の方が可能性が高いと私は考えており、そちらの方が真にEUの目的が実現できるのではないか。

 まあ、感想としてはそう簡単にEUが崩壊することはないし、イギリスが壊滅的なダメージを受けることもないと予想しているが、当面は不確定要素に振り回されるだろう。そして、疑心暗鬼の広がりが崖っぷちの中国経済を今以上に痛めつけると思う。欧州は中国よりも随分としぶといはずである。