Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

華寇対策

 ちょっと先の話しすぎるのでどうかと思いもするが、エントリを起こしたので書いてみる。ここ数日、中国の銀行間取引金利が13%にまで跳ね上がったと大騒ぎになっている(http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130622/frn1306221454004-n1.htm)。当局の介入もあってだろうが現在はやや落ち着いているものの、依然芳しくない状態が続いている。この状況受けて、一部では7月危機説、8月危機説がまことしやかに囁かれている。中国の銀行による飛ばしの実態は闇の中に隠れていて、その正確な数値はわからない。ただ、中国の統計の数値が信用ならないというのは世界的な共通認識と言っても良い。現状で8%を切ったと言われているGDP成長率についても、もはやマイナスではないかという極端な意見も出ているくらいである。

 私も、以前より中国の経済がおかしくなっていく可能性については何度か触れてきた。今言われているのは、アメリカの金融緩和が引き締めに動くことで中国からマネーの逃避が生じるのではないかと言うことだ。もちろん、これは中国だけには限らない。BRICsともてはやされた国々全てが抱える問題でもある。ブラジルでも大きなデモが収まる気配を見せないし、ロシアもここに来て影が薄くなっている。インドにしても、経済状態がよい訳ではない。そして、この中で最も優等生であった中国の崩壊の予兆がごく一般的なメディアでも伝えられ始めた。

 そもそも中国の問題は、未だ多くの人民が貧しい生活を送っていることにある。ただ、国全体が貧しければ人民の不満も溜まらないのだろうが、先富論http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%88%E5%AF%8C%E8%AB%96)が裾野を広げるのではなく頂を高くする側に働いたことが問題の根を深くしている。ジニ係数の拡大にも見える貧富の格差である。成功の夢が見られる間はいいだろうが、それが単なる夢であると明確に気づいたとき、政策に対する信頼感は完全に崩れ去る。こうした先富論の流れには地方政府と結びついた人民解放軍も多く噛んでいる。むしろ、その地位を生かした独占的な商売人として、多くの利益を上げようと躍起になっている(http://blogos.com/article/46919/)。
 この状況で、中国共産党政府が経済混乱を収めることができなければ、人民の不満を抑えるために取る手法は二つである。外に仕掛けるか中を抑圧するかである。個人的には、国外に戦闘(敢えて戦争とは言わない)を仕掛けるよりも国内的な引き締めを計る可能性は低くないと考えている。簡単に言えば第二の天安門事件であるが、これで収拾できれば御の字であろうが今回は思想的なものでは無く経済混乱に基づく混乱なのでそう易々と納まるとは思えない。
 ただ、経済混乱が広がっても日々の生活は必要であり、それは人民解放軍においても同じである。その結果、暴走した軍や漁民が海賊として周辺海域を航行する船を襲うことも考えられる。こうした状況下ではおそらく政府にそれを止める力はないだろうし、一部の人民の暴走として責任を取ることもあるまい。

 少し前に、アメリカが日本と中国との戦争を望むかも知れないことについて触れたが、それは中国共産党政府がまだ一定の支配を保てている場合の可能性であり、統治が崩れた先には混沌が待ち受ける。無秩序状態はいつかは収束するものではあるが、その混乱は周辺諸国に大きなトラブルを巻き起こすであろう。力を持った者が分散することを考えれば、一定の力を削いでから影響を及ぼす方が良いとアメリカが考えて、日中戦争による中国の弱体化を画策する可能性はないとは言えない。
 ただ、どちらにしても中国の混乱が広がることがあれば、大陸内での分離・独立運動も活発化するだろうし、そのとばっちりが海洋にも広がるのは間違いないと思う。喰うために漁場を荒し、喰うために海賊行為に及ぶ。変な話ではあるが、今の中国共産党独裁体制があるからこそ抑えることができていた無軌道が噴出するということも十分予測される。
 場合によれば、沖縄の島々に上陸して不法行為を働くようなケースも出るであろう。抑止力のない暴走ほど迷惑なものはない。そして、その数が少なからぬものとなる時、現状の海上警備体制ではとてもではないが対応できないと思う。その無軌道には、人民解放軍の装備や人材が用いられることは容易に予想できるからである。

 中国の成長に応じた尖閣諸島に対する圧力も問題ではあるが、その国力に陰りが見えたときの混乱によっても同じがそれ以上の問題が噴き出す可能性は低くない。長期的な話ではあると思うが、地道に海上の防衛体制の充実に努めていってほしいものである。