Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

復興人工台地論

津波被害があまりにも鮮烈であったこともあり、高台への疎開が実質的な施策として決まってしまったのではあるが、自分の土地に心ある人たちはなかなか離れられない。特に、東北地方の漁村などでは移動によるコミュニティの崩壊が重大な問題ともなりかねない。
そんな中、こんな報道が為されていた。
高台移転は自然の斜面利用をせよ!!(http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/121014/wlf12101404010000-n1.htm

高台と言えば聞こえはよいがかつての住所とは明らかに異なる場所への移転であり、それよりは近隣の斜面地を利用しての移転の方が望ましいのではないかという記事である。私個人も、高台移転はちょっと無理があるかなと考えているものである。それはすなわち、水産業に関わっていた人たちにそれを捨てて転職せよと迫っているにも近い。ほんの僅かな距離での移転で済む人はマシであろうが、そうならない人も少なからず存在する。
ただ、一方で斜面地は土砂崩れの危険性と隣り合わせという面もあることは、記事でも触れられている。三陸地方の斜面地には表面の柔らかい土の層が薄く、岩盤が容易に露出するという点が記事が斜面地を押す理由にもなっている。実際、すでにいくつかの大学ではこの斜面地利用を行うための効率的な方法に関する研究が始まっているようだ。
今までとは違った視点で有効な案が立案されれば、被災地のスムーズな復興にも弾みがつくであろう。

さて、私は別の案として斜面地を利用するのではなく人工台地という物を作ることで、現地に新しい土地を作り出すことはどうかと思う。現状の港の上に4階建て程度の大きな建物(壁床はなし)を作り最上階のみに床を作る。それを土地として住宅を元の姿と同じように作っていくのである。高さは15〜20mくらいにすればいいだろう。リアス式海岸であれば、奥の高い位置から水平にこの人工台地にアプローチできる。もちろん既存の海岸部分には同じように港を設け、中間層には水産加工所などを作っても良い。下層に日光を入れるために所々には光取りのトップライト部分を設ける。
津波が来ても柱しかなければ津波の力を大きく受ける訳ではない。川にかかる鉄橋の柱脚を想像すればよい。
その結果、一次的な移転(既に行われている)は必要だが元の土地に戻れるという大きな心理的メリットがあり、防波堤を必要としない再建策が可能である。海岸線は破壊されず、中間層などを新たな産業に利用できる。
要するに入江を複層化しようという試みである。

最初の方で復興計画が議論されていたが、この案が聞こえてこないことに私は正直不思議に思っていた。原状回復に加えて新たな成長への呼び水も可能かも知れないし、斜面地と異なり平坦な土地が確保できる。もちろん、本格的な農業までできるものは少々難しいかも知れないが、簡易な家庭菜園程度ならば対応は可能であろう。巨大な堤防を作った上で、住民は奥地へ移転などと言う策よりはずっとよいと思うのだが。
斜面地利用の案が出ているとすれば、これも検討されても良いのではないかと感じている。