Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

原子力保安院と公務員

先日、国会の福島原子力発電所事故調査委員会http://www.naiic.jp/)における保安院長や斑目原子力安全委員会委員長の答弁を見る機会があった。その責任感の低さについては、様々なメディアが既に批判しているのでそれをご覧いただければいいと思うのだが、私は現在の公務員システム自体の問題について考えてみたい。

この原子力問題だけではなく、国が関わる技術面での失態がここのところ続いている。分野は異なるが、特許庁においても特許システムの開発において追いなる失敗を招いている(朝日新聞http://www.asahi.com/business/update/0124/TKY201201240616.html)。この問題も、一部ではかなり早くから囁かれていたものではあるが、それを受注した企業の問題も多大ではあるが、それ以上に特許庁自体の技術力不足が大きな問題であるのは誰の目にも明かである。

これほど目立つものではないものの、実のところ日本全国で自治体の技術力不足に起因する問題は多発している。その原因は、はっきり言えば公務員組織における技術軽視の傾向だと私は考えている。
本来、公務員は予算の振り分けを担当する機関であるので、「民間でできることは民間に」というスローガンの下で人員削減が繰り返されてきた。その方向性自体に間違いはないと思うのだが、やり方は必ずしも正しくない。
なのことはない、技術的な専門部署を民間と競合するという理由で削減していくケースが多い。もちろん、技術公務員側は単純な削減を受け入れたくないために技術ではなく事務処理として技術を扱うことで、自分たちの生き残りを図ろうとすることになる。
今、国だけではなく各都道府県などにもまだ数多くの土木関係職員などが存在するが、職域的には技術職であっても現実には土木的な知識を少し有する事務職員と変わらない。

上記の二つの問題も似たところから発生している。
システムを運用するにはその専門家が必要であるが、それは民間にも存在するということでその部分を削いでしまう。ところが、全体を見渡すのはやはり国であり地方公共団体である。そして見渡すのは専門知識を十分に有しないものであっても様々な助言を受ければ可能であるという論理がまかり通る。それが本当に可能であれば、原子力保安院の院長に事務職の人間がなることで重大事故時に処理が滞ったり、特許システム自体のグランドデザインがないままに発注されるなどと言う問題が生じるということはあってはならない問題ではないか。

建前上は、誰がトップであっても十分なバックアップができるのであれば組織は成立する。平時には確かに問題が露呈すること無しに過ごせるであろう。しかし、それは十分なバックアップが成立するという前提無しには成り立たない。果たして、実質的な技術力を外部に依存するようになった組織が本当に必要な行政施策を行えるのであろうか。
あくまでマニュアルに従った通り一遍のことしかできはしない。要するに平時しか成立しない仕組みなのだと思う。

日本の官僚は正直言って優秀である。その処理能力の高さは、世界の何処の国の官僚と比較しても負けはしまい。地方自治体でも全体的なイメージとしては地方に行けば行くほど劣っていくものの、一部の職員は高い知識と能力を保有している。
ただし、彼らはあくまで事務処理のスペシャリストなのであってゼネラリストではない。

私は、民間から技術の専門家を相応の地位でもっと受け入れて、公務員組織の技術力をもっとUPすべきだと思う。一から育てるのは、おそらく今の時代にはそぐうまい。ただ、相応の技術力を有する専門家を組織に内に招き入れて適切な地位与える。それなら可能であろう。いまでも、いろいろな諮問懐疑的なものに様々な企業を呼んで資料は作っているではないか。それをもう一歩進めればよい。もちろん、当該期間は癒着を防ぐために出身企業へのその分野での発注は絞らなければならない(全くゼロもある)だろうが、企業としても官僚システムに職員を送り込むことは知識面並びに人脈面でマイナスはない。

昔から、準公務員などという考え方はいろいろとあるのだが、結局のところ外郭団体に引き入れる程度しか行われていない(部分的な特殊事例はある)。それは、ポストを守るといったある意味つまらない根性の結果である。少なくとも技術的な職員の育成をできない状況にしているのだから、それを補う能力を公務員組織が持たなければ同じような問題はいつまでも続くのではないかと思う。

「公務員組織の高級ポストは誰のためにあるのか?それは公務員のためではなく、国民のために存在するものなのだから。」